ラグビーW杯に不可欠。ジョセフHCが手塩にかけた司令塔ついに開花 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 後半も、松田の動きは冴えわたった。後半4分には右の大外にいたWTB(ウイング)レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ)に飛ばしパスを通し、その5分後にも利き足ではない左足で相手の裏にボールを転がしてWTB福岡堅樹(パナソニック)のトライを演出。両サイドのWTBから決定機を生むのは、ジェイミー・ジャパンの形だ。

「(田村)優さんのマネじゃないですが、練習のビデオを見て研究したり、SH(スクラフハーフ)流(大/サントリー)さんとコミュニケーションを取ってきた積み重ねが試合で出ました」(松田)

 本来の松田は、ランで仕掛けることを好むスタイル。だが、この試合では自分の前にスペースがないと見るや、しっかりと外のスペースを使ってトライを挙げたところにも成長を感じた。

「前が空いていれば自分で行くし、空いてなければ外のスペース。外が空いてなければ、後ろに転がす。ゲームの中で対応していくのが大事」(松田)

 この試合で9本すべてを決めたプレースキックについても、「感触が戻ってきた」と手応えを掴んだようだ。ジョセフHCも「10点中7点あげたい。とくに前半は非常にいいプレーをしていた」と評価し、スタンドからチームを見守った日本代表キャプテンFLリーチ マイケルも「(松田は)キックもよかったし、ディフェンスもよかった」と称えた。

 しかし、よかったことばかりではない。残り15分ほどで相手に4トライを奪われ、後半だけで28失点を喫してしまった。

「リズムや流れが崩れた時は、9番、10番、キャプテンでコントロールしないといいけない。(次の試合までの)1週間半で、そこも修正してほしい」

 ジョセフHCは松田の今後に期待すべく、さらに高いレベルを要求した。

「まだ満足していない。(自己評価は)60~70点。(課題は)数多くあるので、前向きにとらえてやりたい」

 松田も、さらなる成長を誓った。

 ジョセフHCがそのポテンシャルを認め、我慢強く10番として育ててきたことが、大きな花として開きつつある。

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