世界一になったセパタクロー日本代表 「サーカス集団」から脱却し、相手を上回るために何をしてきたのか? (2ページ目)
【複数の種目があるセパタクロー。日本が世界一に輝いたのは?】
東南アジアをルーツに持つセパタクローは、1990年に開催された北京アジア大会で初めて正式種目に採用された。遡ること1年、1989年に日本セパタクロー協会が設立。発起人のひとりである日本セパタクロー協会・元会長の平野信昭は、2021年10月3日に享年92で永眠するまで、陰になり日向になって黎明期を支え、セパタクローの普及・発展に努めた。
コートの大きさはバドミントンのダブルスと同じ13.4m×6.1m。3タッチ以内に相手コートに返すのはバレーボールと同じだが、ひとりが連続してボールに触ってもよい。手や腕が使えないため、背中でブロックをするのもセパタクローならではのプレーだ。サッカーのオーバーヘッドキックのように宙返りしながらボールを打つなど、ネット際の激しい攻防から「空中の格闘技」と呼ばれている。
種目は男女ともに複数ある。最もスタンダードな「レグ」は、アタッカー、トサー、サーバーの3人で構成されている。セパタクローの花形種目で、アジア大会のチームレグ(団体戦)は、1998年バンコク大会から2023年杭州大会までタイが7連覇中。マレーシアと双璧をなす。プレースタイルが異なるタイとマレーシアの関係は、サッカーに例えるなら、さながらブラジルとアルゼンチンといったところだ。
2対2の「ダブル」は日本が得意とする種目で、女子日本代表が2006年のドーハアジア大会から3大会連続で銅メダルを獲得している。
最も歴史が浅い4対4の「クワッド」は、2018年のジャカルタ・パレンバンアジア大会で初めて採用された。身体能力がモノを言う「レグ」や「ダブル」に比べて、戦術的要素が強い。
理由のひとつは、アタッカーが2人になることで攻撃の選択肢が増えること。また、複数人でブロックに跳ぶことができるため、相手のアタックのコースを制限し、戦略的にレシーブの陣形を取ることができる。エンドラインから打つサーブは、ボールのスピードやコースに変化を加えることで、相手の守備を崩す効果がある。
強豪国の攻撃を止めた3人でのブロック photo by Katsuaki Iwamotoこの記事に関連する写真を見る
「この種目はチャンスがあるんじゃないか」
いち早く目をつけたのが、現役時代は本場タイのプロリーグでもプレーし、日本代表としても活躍した寺島武志監督だ。データを取って対戦相手のプレー傾向を分析し、それを実際の試合に落とし込んだ。試行錯誤のなかで徐々にハマっていく感覚を覚え、結果が出ることで選手の自信につながった。
2 / 4

