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世界一になったセパタクロー日本代表 「サーカス集団」から脱却し、相手を上回るために何をしてきたのか? (3ページ目)

  • 取材・文●岩本勝暁 text by Katsuaki Iwamoto

【データを活用したチーム強化】

2023年の杭州アジア大会が終わると、強化・育成委員長の飯田義隆とともに3年後の愛知・名古屋アジア大会に向けた強化プランを作成。「結果を出すためのプロセスには、ふたつの軸がある」と寺島は言う。

日本代表の寺島監督 photo by Tsutomu Takasu日本代表の寺島監督 photo by Tsutomu Takasuこの記事に関連する写真を見る

 ひとつ目の軸は、選手個々の技術力を上げること。個の能力が高まれば、それが還元されたチームはより強くなる。もうひとつは、戦術的な強化だ。

「このふたつの軸を常に考えながらやってきました。他国に比べて技術で劣る日本がうまくなるにはどんな練習をしたらいいのか。どういう意識を持たせたらいいのか。それに加えて、クワッド、レグ、ダブルとそれぞれのゲーム特性を見た時に、どうやったら勝率が上がるのか。それまでの日本は、『技術が上がれば勝てる』みたいな曖昧な感じでした。

 でも、クワッドはふたつ目の軸にあたる戦術的な要素を色濃く出せる。既成概念にとらわれず、突拍子もないこともしたし、誰も考えないようなことにもトライしてきました。もちろんうまくいかないこともありましたが、そういうことも含めてできるだけのことをやってきました」

 寺島とタッグを組んでチームを強化してきた松田祐一コーチの存在も大きい。相手のアタックのコースをノートに手書きで記し、それをベースにブロックの跳ぶ位置、タイミングなどをチーム内で共有した。

 戦術面の強化を図るには、若手選手の台頭も不可欠だった。象徴的だったのが、トサーの春原涼太だ。

トサーの春原 photo by Tsutomu Takasuトサーの春原 photo by Tsutomu Takasuこの記事に関連する写真を見る

 慶應義塾大学出身の26歳。「大学の先輩やOBから『頭を使って勝つんだ』ということをずっと教えられてきました」と言う春原は、戦術に伴う技術を身につけ、大学3年で初めて日本代表入り。相手を見ながら戦う頭脳的なプレーが高く評価された。

 データの精度が上がることで、選手ひとりひとりのデータに対する理解度も高まった。春原は、「データを取捨選択した」と語る。

「データを使ったセパタクローは、それまでもやっていました。ですが、どのデータを使えばいいのかわからない状態だったんです。分析班が当たりをつけてデータを取り、僕らもそのデータを見ながら、ただ『そうなんだ』という感じでやっていただけ。

 でも試合に勝つことを考えれば、必要なデータと、不要とは言わないけど優先順位が低いデータがある。その取捨選択をしたことで、さらにデータの分析力が上がったと思います。選手もよかった点をフィードバックしやすく、それがこの2年間で積み重なって、今回の世界選手権でも機能しました」

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