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【バドミントン】注目の19歳・宮崎友花、初出場の世界選手権で16強敗退に「終わり方が残念でした」 (3ページ目)

  • 平野貴也●取材・文 text by Hirano Takaya

【持ち味はスピードとオーバーハンドショットの打ち分け】

 手法を変えて臨んだ世界選手権は、地道にひとつの試合を勝つことの難しさと大切さを実感する大会になった。コーチ席からアドバイスを送っていた、ACT SAIKYOの武下利一ヘッドコーチは、精神的な影響がコートでどのように出ているかを見ていた。

「ここ数大会、あまりよいイメージを持てていないまま、この大会に入ってきた。正直、よいパフォーマンスを出すのは難しいと思っていたけど、1、2回戦では少し違ったプレーが出てきた。本来のよいプレーにはまだ遠いけど、自分の動きのよさを思い出せる部分、きっかけになる部分があったと思う」

 宮崎の最大の持ち味は、オーバーハンドショットの打ち分けにある。強打、強打と見せかけて手前に落とす柔らかい球、それを警戒させておいて、相手コートの後方へ球を送り込むクリア。相手の思惑を外して前後へ揺さぶるラリーが真骨頂だ。しかし武下ヘッドコーチは、打ち分けの前段階の問題を指摘する。

 より強い相手を攻略しようと配球を考えるあまり、打ち分けのうまさに頼ったラリーになっていることが、逆に相手の予測範囲に収まって先手を取れない現象が起きているという。持ち味であるスピードを生かし、まずよい体勢を整えてショットへの入りを早くすることで、相手から見えるこちらの選択肢が増えて反応を遅らせ、得意とするオーバーハンドショットの打ち分けが、輝きを取り戻すという見立てだ。

 より早く準備ができれば、相手を見る、フェイントをかける、タイミングをずらすといった駆け引きを、多く含めることができて優位になる。当たり前のことではあるが、球への入りというのは難しいもので、トップ選手であっても「入れているつもり」の感覚になることがある。この大会の直前にも、前回の世界選手権で男子シングルス銀メダルの奈良岡功大(NTT東日本)や、女子シングルスで世界選手権2連覇の実績を持つ山口茜(再春館製薬所)が、そうした感覚に言及していた。より高いレベルへ進み、新たな配球、駆け引き、勝ち方を覚えていく一方で、忘れてはならない基本の重要性は不変だ。

 ただ、理屈だけで手応えや自信は得られない。復調、あるいは殻を破っての進化――。どちらにしても、先へ進む実感は、勝利でしか得られない。自身も周囲も大きな期待を持っているなか、上位進出が難しい時期と向き合うのは大変だ。しかし宮崎は、期待と現実の歩調を合わせ、次の一歩を踏み出そうとしている。先を見すぎて好結果だけを望むことなく、目の前の1勝、1球を取りに行く。挑戦者としての顔を取り戻して。


著者プロフィール

  • 平野貴也

    平野貴也 (ひらの・たかや)

    1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカー、バドミントン、カバディ等、スポーツ全般を取材している。

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