パリオリンピック卓球女子団体 押しつぶれされそうだった張本美和はいかにして「壁」を乗り越えたか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「(コートサイドで涙が出てきたのは)メダルが獲れてうれしい、というより、第4試合に勝ててホッとしました。(途中まで)リードされた状況だったので、"自分が負けて、チームに迷惑かけてしまうんじゃないか"っていうのが大きくて......。本当に、切り替えられないくらい落ち込んでいたので、第4試合に勝ててよかったなって」

 戦いにかける気持ちが、チーム全体で強いのだろう。

 平野はこの日、獅子奮迅のプレーだった。張本は、その平野に支えられながら、結果を叩き出した。一方、早田はケガに正面から向き合っている。首脳陣がそのストイックさに「頭が下がる」と脱帽するほどで、チーム全体を勇気づけた。それぞれが仕事を果たしている。

 この夜、早田はミックスゾーンでの取材を受けていない。試合後、すぐに深夜の治療に向かった。準々決勝後、本人が「治療を優先させてもらうのは、勝つためなので」と、試合後の取材を受けられない可能性をやんわりと伝えていた。

「最初から目指すは金メダルなので、すべてはそのために」

 早田はそう決意を語っていた。

 8月10日、決勝戦。中国は果てしなく強いが、彼女たちは必勝を期してコートに立つ。 

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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