パリオリンピック卓球男子団体、準決勝へ 張本智和は信条を曲げても「勝ちにこだわる」 (2ページ目)
【「燃え尽きてもいいと思っている」】
そう言って苦笑いする張本だが、混合ダブルス1回戦で敗退したあとは、戸上、篠塚によく話を聞いてもらっていたと言う。「たぶん、うんうんと頷いているだけですけど」と語っていたが、「それだけでも楽になります」と、本音を洩らしていた。試合だけでなく、ずっと一緒に過ごすことで、外野からはわからないチームワークが熟成しているのだ。
「ふたりとも聞いていないし、何か言われても僕が聞かないって、お互い、わかっているんですけどね(笑)。意味のない、生産性はないやりとりですが、それが友達のよさでもあるのかなって思います。戸上とは小学校の、敬語ができていない時からの関係で、メディアの前では『戸上選手』と呼ぶようにしていますが、興奮していると今日みたいにボロが出ちゃいます(笑)」
いい関係性なのだろう。台湾戦の殊勲者になった戸上もこう語る。
「昨日(1回戦のオーストラリア戦)は、篠塚選手が2点取って主役になりました。今日は、俺が取って『主役だってアピールできた!』と思います。2番手の張本選手がいい試合をしてくれて、緊張を背負うことなくできました」
自らの活躍を誇りながらも、篠塚の活躍をたて、張本にも配慮を忘れなかった。ひとりひとりが、チームのなかで落ち着いて仕事ができている。
張本は独自の思考展開をするのだが、このチームのなかで居心地が良さそうだった。
「ミックス(混合ダブルス)で負けた時に言いましたが、ミックスで負けてもシングルスで無理に取り返そう、と思わなかったし、シングルスで負けても団体で『倍、頑張ろう』と思わない。その考え方がよかった、と思っています。おかげで今日もリン(林昀儒)とのシングルスに負けても、次のチュワン(荘智淵)に負けるわけではない、って戦えました」
張本は早口で言ってからこう続けている。
「でも、明日の準決勝では取り返すつもりでやります、エース対決(今日、負けた分)を取り返す。ここだけは信念を曲げてやっていきたい。(勝てば)決勝はあるんですけど、今の力は確実に中国に劣るので、対等になるのは4年後。まずは全力で準決勝を勝ちきるってところで、燃え尽きてもいいと思っているので」
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