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熾烈な女子卓球パリ五輪争いの行方を水谷隼が展望 「メダルを取れる選手」を選ぶための選考基準に関する考えも明かした (2ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by T.LEAGUE/アフロスポーツ

【次世代の木原、長﨑の課題】

――女子は伊藤選手や早田選手、平野選手のすぐ下の世代も、木原美悠選手と長﨑美柚選手が伸びてきましたが、いかがでしょうか?

水谷 「黄金世代」と言われる3人とは、ちょっと差があるかな......。世界で勝てるかどうかで見た時に、経験も実力も足りない印象です。勢いで試合をしているというか、卓球がまだ"浅い"。相手にしてみると、そのほうが怖い時もありますけどね。「普通はこんなことしないだろう」ということをしてきますから。

 卓球は読み合いの中で裏をかいたり、裏の裏をかいたりしますけど、それが作用しない怖さ。若い選手は、そういう部分で相手を掻き乱すところがあります。ただ、本当のトップ選手に勝とうとしたら、やはりクレバーな読み合い合戦になる。今の木原選手や長﨑選手では難しいのかなと思いますね。

――具体的に、2人の課題を挙げるとしたら?

水谷 男子の戸上隼輔選手と一緒で、勝負どころで簡単なミスをすることが多い。勝負どころでは、トップ選手も緊張して攻撃的なプレーができなくなってしまうものですが、そこでポロッとミスをしたら、相手は「めちゃくちゃラッキー」と気持ちがラクになります。そのへんの心理を、まだ理解できていないのかもしれません。どうしたら相手を苦しめられるか、という考えに至っていないように見えます。

――相手を苦しめるプレーは、やはり中国勢が巧みですね。世界選手権で使用された台はボールが止まりやすい傾向にあったので、その特性を利用したのか、ナックルやハーフロングを多用していました。

水谷 確かにそうでした。台の弾みもそうですし、照明もプレーに影響する部分。照明が強いと、その熱でラバーのゴムが柔らかくなって球がすごく跳んだりもします。ゴムにボールが食い込むので。僕も世界中で試合をして、「会場が暑いからボールが跳ぶだろうな」とか、そういう繊細なところまで気にしていました。それがわかっていないと、序盤でポロポロっとミスしちゃうんです。

――早田選手は湿度も計算に入れて、練習や試合をしているそうです。

水谷 湿度も大事ですね。僕もラバーを変える時に意識していました。遠征先のホテルの部屋でラバーを貼る時は絶対にシャワーを浴びないし、先輩と相部屋で先輩がシャワーを浴びる場合は、必ず僕が別の選手やコーチの部屋に行っていました。バスルームの湿気が部屋にくるのが嫌だったからです。逆に乾燥するのも嫌なので、クーラーもつけなかった。ラバーを貼った後は埃がつくのが嫌で、2時間くらいは机の引き出しやクローゼットに入れて乾かしていました。

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