熾烈な女子卓球パリ五輪争いの行方を水谷隼が展望 「メダルを取れる選手」を選ぶための選考基準に関する考えも明かした (3ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by T.LEAGUE/アフロスポーツ

【オリンピックで勝てる選手を選ぶための基準】

――10代の女子選手では、張本智和選手の妹で、15歳になったばかりの張本美和選手も成長著しいですね。

水谷 ポテンシャルがすごいですよ。体型に恵まれていて手足も長く、日本の女子の中でも両ハンドに威力がある選手です。すでにプレースタイルが定まっていて、このまま強くなるだろうなと思います。今はまだ、強い選手と対戦した時にちょっと対応できていないように見えるので、うまく戦術を変えられるようになると、この1年でまた伸びると思いますよ。

――女子のパリ五輪代表選考レースはどうなっていきそうですか?

水谷 国内選考会があと2回残っていて、そこに選考ポイント対象のアジア競技大会とアジア選手権、来年1月の全日本選手権がある。そう考えると、1位の早田選手が代表に決まるのは濃厚ですけど、2位以下はまだわかりません。

――今回の代表選考レースは、これまでにない約2年間の長丁場。選手たちのコンディションを踏まえて、あらためて水谷さんのご意見を聞かせて下さい。

水谷 選手は本当に大変ですね。国際大会の数が多い中で、国内選考会でも競わなきゃいけないのは負担になります。今回の選考基準は日本独自のもので、世界ランキングを反映しないものですが、個人的には、そこも反映させるものにしてもよかったかなと思います。国内の選考ポイントとうまくミックスするような形で。

――それは、選手個人の世界ランキングで決まる五輪本番のシードを見据えてということでしょうか?

水谷 シードももちろんありますし、結局、オリンピックで勝つための選手を選ぶわけなので、世界ランキングを疎かにしてもいいのか、という考えです。やはり「オリンピックに出る選手」ではなくて、「オリンピックで勝ってメダルを取れる選手」を選んでほしい。そう考えると、世界ランキングはひとつの基準になるんじゃないかと思います。

――代表選考にはTリーグのポイントも影響しますね。

水谷 これからポイント差が詰まっていって、最終的にTリーグのポイントで順位が入れ替わることもあるでしょう。それでオリンピック本番で成績がよければいいけど、そうじゃなかった時は代表選手たちの意見を日本卓球協会が集めてほしい。そして選考方法についてしっかり話し合い、今後に生かしてほしいです。

【プロフィール】

水谷隼(みずたに・じゅん)

1989年6月9日生まれ、静岡県出身。両親の影響で5歳から卓球を始め、中学2年からドイツ・ブンデスリーガに卓球留学。2007年に全日本選手権シングルスで優勝し、2019年には10回目の優勝を果たす。オリンピックには、2008年の北京五輪から4大会連続で出場。2016年リオ五輪ではシングルスで日本人初のメダル(銅メダル)を獲得。2021年東京五輪では混合ダブルスで金メダル、男子団体で銅メダルを獲得した。2022年2月に引退セレモニーが行われ、現役生活を終えたあとは解説者やタレントなど、幅広く活躍している。
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