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水谷隼から見た男子卓球界の現状と、張本智和に次ぐ選手が世界で勝つために必要なこと 日本の指導者育成の課題にも言及した (3ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by Kyodo News

【日本は「優秀な指導者が育っていない」】

――指導によっても考え方は変わってきそうですね。

水谷 まったく変わると思います。緊張感を持って練習することはすごく大事。僕が2016年リオ五輪までプロコーチの邱建新(キュウ・ケンシン)さんに指導してもらっていましたが、邱さんが後ろで見ているのと見ていないのとでは雰囲気が違う。同じ練習内容でも3倍ぐらい疲れました。ナショナルチームの合宿では練習相手の選手も緊張感を持ってやってくれるので、優秀なコーチは雰囲気を作るのがすごくうまいなと思います。

――男子日本代表の田㔟邦史監督も、張本選手に次ぐ「2番手、3番手の選手強化が課題だ」とおっしゃっています。

水谷 まずは、日本で優秀な指導者が育っていない現状を受け入れる必要があると思います。それと、張本選手は特殊なものを持っているので、そこを基準にして「同じくらい強くならないのはなんでだろう」と比べちゃうのは違う。選手それぞれにいいところがあるし、戸上選手もモチベーション高く一生懸命練習しています。強くなるきっかけって、ちょっとしたことなんですよね。

――それは、強い選手に一度勝つ、といったこともそうですか?

水谷 その前に、ある程度実力がついてくると競るゲームが多くなり、ゲームを取られたとしても点数が9対11など僅差になることが増えてきます。そこの、あと1、2点を取るには、さっきも言ったようにサービスを台から出さなくなるとか、YGサービスに変えてみるとか、チキータレシーブばっかりしているのをやめるとか......そういうことを覚えるだけで結果は変わってくるはずです。

 僕も格上のティモ・ボル選手(ドイツ)に2勝した時は、彼が必ず勝負どころで僕のフォアサイドにチキータを打ってくるという癖を読みきったからでした。ずっと負け続けていたから研究を重ねて、点数を取られるパターンを理解して待っていたんです。そういう何かを、ひとつでも見つけることができたらまったく変わると思いますよ。

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