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伊藤美誠が平野美宇と高速ラリー戦。
あえてライバルの土俵で打ち合った (2ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • photo by Kyodo News

 近年でこれほど中国勢を圧倒した日本人選手は存在しなかったのではないか。そんな見方も決して大袈裟ではない、出色のパフォーマンスだった。4月には世界ランキング2位まで登りつめ、名実ともに世界のトップ選手としての評価を固めつつある。

 伊藤は3歳から母・美乃りさんの指導で猛特訓を重ね、五輪の金メダルを意識してきた。バックドライブ、逆チキータに無回転強打と、一般的に扱いが難しいとされる「表ソフトラバー」を用いながら回転を自在に操る技術のレパートリーは、母との猛練習で培われてきたものだ。その技術に一瞬のひらめきが加わることで戦術の幅をもたらし、代名詞となっている変幻自在なスタイルが伊藤の独自性を際立たせている。

 卓球のように技術の移り変わりが早い競技においても、伊藤の進化の速度は他と一線を画する。並のアスリートなら「覚醒」と呼べる瞬間ですら、伊藤にとってはその表現が当てはまるか怪しい。冒頭で「小さな覚醒」と表現したのは、決して現状に満足することなく、絶えず変化を恐れない精神力を持つ伊藤にとって、「覚醒」もある意味では通常運転のように感じるからだ。

 それでもより狭義な意味で覚醒を捉えるなら、それを繰り返す伊藤を象徴する瞬間として、2018年の全日本選手権3冠が該当するだろう。

 伊藤はリオ五輪後の2年間、ワールドカップ(2016年10月)、アジア選手権(2017年4月)などを制した平野美宇ほどのインパクトは残せなかった。

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