2020.06.12

伊藤美誠が平野美宇と高速ラリー戦。
あえてライバルの土俵で打ち合った

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • photo by Kyodo News

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第21回 卓球・伊藤美誠
初めて3冠を達成した全日本選手権(2018年)

 アスリートの「覚醒の時」——。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか……。筆者が思う「その時」を紹介していく——。

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2018年の全日本選手権でシングルスを制し、3冠を達成した伊藤 伊藤美誠の進化は止まらない。アスリート覚醒の定義を「目覚めの時」とするなら、伊藤はこの4年間で何度も小さな覚醒を経験している。

 15歳で最年少メダリストになった2016年のリオ五輪後、伊藤は中国人選手に敗れても、再戦で打ち破ってきた。現世界ランキング1位の陳夢に対しては未勝利だが、劉詩雯、朱雨玲、王曼昱らトップ選手から軒並み白星を挙げている。敗戦の悔しさを糧に成長を続け、目指す頂はぐっと近づいた。中国では”大魔王”と称されるなど、卓球王国からもっとも警戒される選手へと変貌を遂げたのだ。

 直近では今年2月にハンガリーオープンのシングルスで優勝。続く3月のカタールオープンでは、リオ五輪金メダリストの丁寧にストレート勝ちして準優勝を果たすなど、ワールドツアーでも昨季後半から好調を維持している。とくに丁寧戦は、結果以上に一方的な内容だった。多彩なバックレシーブで丁寧の裏をかき、ふてぶてしさすら感じさせる冷静な試合運びで、五輪女王は為す術なく敗れ去った。