伊藤美誠が平野美宇と高速ラリー戦。あえてライバルの土俵で打ち合った (4ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • photo by Kyodo News

 決勝の相手はライバルの平野だった。伊藤は2016年の同大会準決勝で平野にストレート負けを喫している。

「全日本の借りは全日本でしか返せない」

"みうみま"対決となった一戦は、リベンジを期す伊藤の意地が1ゲーム目から平野を呑み込んだ。持ち前のテクニックを活かし、足を止めて展開することが多かった従来のスタイルとは異なり、平野が得意とする高速のラリー戦を繰り広げる。

 あえて、ライバルの得意な土壌で真っ向から打ち合う――。そんなメッセージが込められたかのようなモデルチェンジに平野は戸惑った。テクニックに速さと力強さも加わった伊藤は、ラリー勝負では中国人選手すら凌駕した当時の平野に対して一歩も引かずに打ち勝った。試合は終始伊藤ペースで進み、終わってみればゲームカウント4-1と平野を寄せつけず、シングルスでも自身初の優勝を果たした。

 この3冠達成は、福原愛が引退した卓球界に新たな旗手が誕生したことを印象づけた。伊藤は翌2019年の日本選手権でも3冠を獲得。今年も3冠に王手をかけながら、シングルス準決勝で、ダブルスのパートナーである早田ひなに惜敗した。それでも、3年連続の3冠にあと一歩まで迫ったのは、長い歴史の中でも伊藤だけだ。「黄金世代」と呼ばれる選手が次々と台頭し、強敵ひしめく現代の日本女子の中でこれだけの成績を残し続けたことが、この偉業の価値を高めている。

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