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男子ハンドボール日本代表、世界選手権7戦全敗。でも、光が見えた (2ページ目)

  • 田口有史●取材・文・撮影 text & photo by Taguchi Yukihito

 そんな日本の奮闘に会場はスタンディングオベーションに包まれ、後半の戦いに向かう選手たちを、入退場口に集った観客たちがハイファイブで送り出した。大きな力を得た後半は、開始7分までに12-16と一気に逆転を許したものの、再びディフェンスに集中。オフェンスでもコート幅をいっぱいに使う攻撃が効果を発揮して得点を重ねていった。

 観客たちは、ユーロ王者に必死に食い下がる日本選手たちを"ジャパンコール"で後押し。たびたびファインセーブを見せるゴールキーパーの甲斐昭人に対してもコールが巻き起こるなど、完全にホームゲームと化した。試合には22-26と惜敗したが、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは甲斐。日本選手たちの充実した表情と、負けた試合後のようなスペインの選手たちの表情が、両チームが得た手応えの差を物語っていた。

選手たちに指示を出すシングルドソン監督選手たちに指示を出すシングルドソン監督 続く第4戦の相手は、昨年の欧州遠征での強化試合で25-42と大敗を喫した、シグルドソン監督の母国であるアイスランド。08年北京五輪で銀メダルを獲得するなど、「ハンドボールが国技」と言われるほどの強豪だ。

 そのアイスランドに対して、試合開始直後からペナルティスローを外したり、2分間の退場者を出したりとリズムに乗ることができず、10分を過ぎた時点で3-6。しかし、今の日本はその悪い流れを引きずらない。

 ディフェンスを立て直して失点を抑え始めると、東江のゲームメイクを中心に攻撃にリズムが生まれて1度は逆転。1点ビハインドで前半を終えた。後半10分にキャプテンの信太弘樹が不運なレッドカードで退場したところから5分間で3点差をつけられたが、堅守からの速攻などで後半23分には再び1点差に詰め寄った。

「残り7分で逆転か」というムードになったものの、相手ゴールキーパーのファインセーブもあり、連続得点で突き放され21-25で敗戦。それでも、相手に何度も流れを持っていかれそうになりながら、自分たちの時間を取り戻す強さ、終盤まで拮抗した試合を展開できるようになった日本の成長は、スコアが示すとおりである。

「成長している実感はあるんです。あとは勝利がほしい」

 シングルドソン体制になってから、元のライトウィングだけでなくバックプレーヤーとしても活躍している渡部仁は、大会期間中にしきりと「勝利」に対するこだわりを口にしていた。

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