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鋭い観察眼と勘で勝つ。伊藤美誠が
楽しむ卓球で異次元の強さを見せた

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

 天真爛漫な18歳の女子高生に、"貫禄"という言葉を重ねるのはどこか違和感を拭えきれない。だが、波乱が続いた全日本卓球選手権女子シングルスを制し、2年連続で女子ダブルス、混合ダブルスとあわせて三冠を達成した伊藤美誠(スターツSC)が見せつけた、成長と安定感を的確に表現する言葉が他に見つからないのも事実である。

「自分のプレーを楽しもうと思っていたら、三冠がとれました」

 優勝会見でそう語った若き女王の独自の卓球観とプレースタイルは、新たな才能が次々と台頭してくる日本の女子卓球界で特別な輝きを放ち始めている。

全日本選手権で2年連続三冠を成し遂げた伊藤全日本選手権で2年連続三冠を成し遂げた伊藤■"遅れてきた黄金世代"早田ひなの覚醒

 大会最終日を迎えるまで、女子シングルスの話題の中心にいたのは、伊藤と同学年のサウスポー、早田ひな(日本生命レッドエルフ)だった。

 伊藤や、同じく同学年の平野美宇(日本生命レッドエルフ)にはない恵まれた体格とフィジカルの強さ、力感にあふれたスケールの大きな卓球は以前から高い評価を得ていた。しかしこれまでは、小学生のころから「みうみまペア」として注目されたふたりの背中を追う形でキャリアを積んできた。

 知名度も実力も一気に"上昇気流"に乗ったのは、2017年5月末から行なわれた世界選手権デュセルドルフ大会で、伊藤と組んだ女子ダブルスで銅メダルを獲得してからである。

 昨年10月に開幕したTプレミアリーグでも日本生命の主力として活躍。村上恭和総監督が「今の早田は日本で一番勢いがあると思うほど、一つひとつの技術がレベルアップしている」と評価するほどの充実ぶりを見せた。

 そして迎えた平成最後の全日本選手権では、伊藤とペアを組んで女子ダブルス連覇を果たすと、シングルスでも観客の視線をクギづけにするようなプレーを見せ続けたのだ。

 圧巻だったのは、6回戦の石川佳純(木下アビエル神奈川)戦である。

 ふたりは同じサウスポーで戦型も似ているが、早田は長いリーチを生かした角度をつけた強打で、世界ランキング3位まで登り詰めた日本のエースを圧倒。4-1で殊勲の勝ち星をあげた。

 石川は、「ひなちゃんのバックの強さに押されてしまい、自分の思っているバックのスピードが出なかった」と振り返ったが、破格のパワーを試合展開の中で効果的に使えるようになった早田の勢いは止まらなかった。

 強打者対決として注目された準々決勝の芝田沙季(ミキハウス)戦でも、早田は打球点の早いドライブを連打。世界ランキングを15位まで上げた(1月30日時点)芝田を相手に4ゲームを連取し、初めて全日本シングルスのベスト4に名を連ねた。

 最終日の準決勝でダブルスパートナーでもある伊藤とぶつかることになったが、この時点で、早田が同学年の平野、伊藤に続いて皇后杯を手にするシーンを想像した卓球ファンは少なくなかったのではないか。

 だが、伊藤は鮮烈なパフォーマンスを続けてきた同学年のダブルスパートナーにつけいる隙を与えず、その勢いもふくめて飲み込んだのである。

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