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世界卓球の理不尽な「合同コリア結成」は
スポーツの本質をねじ曲げた (5ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru

日本のスポーツは、政治から自立できているのか

 スポーツと政治の関係について振り返る時、日本には苦い記憶がある。

 1980年のモスクワ五輪ボイコットである。当時のソ連のアフガニスタン侵攻を非難したアメリカのカーター政権がボイコットを表明。西側諸国にもボイコットを呼びかけ、日本はそれに従った。だが、この時、西側諸国といわれる国のすべてがボイコットしたわけではない。イギリスやフランスはそれぞれの政権がボイコットを表明したものの、国内のオリンピック委員会がスポーツの権限と責任でモスクワ五輪に参加したのだ。

 冒頭で紹介した荻村さんの言葉は、日本のモスクワ五輪ボイコットについて言及したコメントの一部である。荻村さんはそのインタビューのなかで、こうも言及している。

「日本のモスクワ五輪ボイコットがよかったのか。今考えると、ボイコットの意義はなかったと思う。もし参加していたら、日本はソ連に対してもっとはっきりモノを言えたのではないですか。今の日本にとって対米協調が国是(こくぜ)であることは認めますが、スポーツまで米国の意向に従う必要があったか。三権分立並みとはいわないが、スポーツをもっとのびのび、おおらかにやらせたらどうですか」

 今回の南北合同チーム結成は、スポーツが政治とどう向き合うべきか、その距離感のとり方の難しさを改めて露呈した。こうした問題に直面した今だからこそ、2020年に東京で2度目のオリンピック・パラリンピック開催を迎える私たちは、荻村さんが遺してくれたメッセージをあらためて胸に刻むべきではないだろうか。40年近く前、私たちの国のスポーツが政治に屈した過去を忘れてはいけない。

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