2018.04.29

世界卓球で「サプライズ選出」。
15歳の美少女・長崎美柚とは何者か

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by AFLO SPORT

【長崎美柚 15歳の才能を支える絆】(前編)

 4月29日からスウェーデンで開幕する第54回世界卓球選手権(団体戦)の日本代表メンバーのなかに、この春に女子高生になったばかりの15歳の名前があることに驚いた人は多かっただろう。長崎美柚(みゆう)という卓球選手の存在を初めて知った人もいたかもしれない。

初めて世界卓球のメンバーに選出された長崎美柚 photo by AFLO SPORT  今月20日に東京・赤羽のナショナルトレーニングセンター(NTC)で開かれた公開練習後の会見で、長崎は「出たいとは思っていたけど、世界ランクも低いし、まさか選ばれるとは思っていなかった。チームを盛り上げて少しでも明るくしたい」と、はにかみながら語った。その世界ランキングは、選考が行なわれた今年3月の時点で128位。層が厚い日本の女子勢では20番手にあたる。

 女子卓球界を牽引する立場になった世界ランキング3位の石川佳純(25歳・全農)、黄金世代と呼ばれる世界ランク5位の伊藤美誠(スターツ)、同6位の平野美宇(エリートアカデミー)、同12位の早田ひな(日本生命)の17歳トリオに続き、無名の少女がランキング上位にいる先輩選手たちを押しのけて5番手の座に大抜擢されたのはなぜか。

“打倒中国”を掲げて戦う東京五輪を2年後に控えるなか、新たに紡(つむ)がれたシンデレラストーリーの背景をレポートしたい。

「チーム美柚」が抱いた夢

 神奈川県藤沢市の小田急線・湘南台駅から5分ほど歩いた住宅街の一角に、「岸田クラブ」の看板がある。地元の中学で数学教師をしながら卓球部の指導をしていた岸田晃が、30年ほど前に立ち上げた卓球クラブである。

 岸田クラブの名が知られるようになったのは、青森山田から明治大へ進学し、現在はシチズンでプレーをしている町飛鳥(まち・あすか)の存在が大きい。2015年1月の全日本選手権男子シングルスで決勝まで進み脚光を浴びた町は、子どもの頃から岸田クラブで腕を磨き、全日本ホープス(小学6年生以下)を制した。

「町のような選手が育つと、私たちもいろんなノウハウを蓄積できます。現在も30人ほどいる子どもたちの指導に力をいれていますが、うちのクラブには卓球を楽しみにやってくるお年寄りたちもいます。美柚の祖母もそのひとりでした。いつも『孫にも卓球をやらせたい』とおっしゃっていて、それじゃあということで、美柚も自然とこのクラブで練習するようになったんです」と、岸田は言う。