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世界卓球で「サプライズ選出」。
15歳の美少女・長﨑美柚とは何者か (3ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by AFLO SPORT

中国選手に負けない回転量のドライブを

 国際舞台で戦う日本のトップ選手たちに中国選手の印象を聞くと、男女を問わず、ほとんどの選手から「ボールの回転量がすごい」という答えが返ってくる。「だから、狙ったところにボールをコントロールできない」と。

 岸田や村守たちは、目の前に現れた身体能力の極めて高い女の子を、こうした中国選手に対するコンプレックスを払拭できる選手に育てようとした。「幼い頃から回転を意識して練習すれば、中国のトップ選手にも勝るドライブの使い手になれる。今までの日本卓球界にはいなかったタイプの選手になれるかもしれないという期待がありました」と、岸田は言う。

 右利きのサウスポーであることも、その青写真をより明確にした。村守は「体の使い方が右利きなので、バックハンドドライブが最初からうまかった」と振り返る。

 村守が鮮明に記憶しているのは、全日本選手権の神奈川県予選の前に試合を経験させようと、長﨑が小学1年生のときに初めて出場させた、静岡県卓球スポーツ少年団オープンのバンビの部(小学2年以下)の準々決勝でのことだ。

 思うようなプレーができず、長﨑は明らかに苛立っていた。

「いったい、美柚はどうしたいの?」

 タイムアウトでベンチに戻ってきた長﨑に村守が聞くと、7歳になったばかりの少女は「思い切り打ちたい」とだけ言った。実戦経験が乏しかった少女は、負けたら終わるトーナメントのプレッシャーからか、無意識のうちに消極的になっていたのかもしれない。

「わかった。美柚がしたいようにしていいよ。結果は気にしなくいいから、とにかく思い切り打ってごらん」

 そう伝えて小さな背中を押した村守は、その後に目の前で繰り広げられた光景を瞼(まぶた)に強く焼きつけることになる。

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