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世界卓球で「サプライズ選出」。
15歳の美少女・長﨑美柚とは何者か (4ページ目)

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru
  • photo by AFLO SPORT

 バンビの部で使われる卓球台の高さは66センチで、通常の台よりも10センチ低い。それでも、小学校低学年の女の子が力一杯フルスイングした打球は多くの場合、ネットを大きく超えてそのまま相手の台もオーバーしてしまう。だが、長﨑がフルスイングで振り切ったボールはものすごい回転量でドライブがかかり、そのほとんどすべてが美しい弧を描いて相手コートで弾んだ。

「美柚のドライブの力にあらためて驚きました。あれが初めて彼女のスイッチが入るのを見た瞬間でした」と村守は言う。

 大会は決勝で敗れ、全日本選手権の神奈川県予選も最後まで勝ち抜くことはできなかったが、その後の1年で長﨑はさらに成長スピードを加速させていく。

 2年生になってバンビの部の県予選を突破すると、全国大会でも両ハンドのドライブとサーブを武器に勝ち進み、日本一のタイトルを獲得したのだ。1年前は県の予選会で姿を消していた無名の少女が勝ち上がっていくと、村守や岸田たちは他府県の卓球関係者からこんな声をかけられた。

「岸田クラブには、中国人のコーチがいらっしゃるのですか?」

 2人は「いません。私たちはただのおじさんやおばさんの集まりですから」と言葉を返したが、初めて見る長﨑のドライブに、多くの人が中国選手のプレースタイルを重ねたのだろう。長﨑はその後も順調に成長し、4年生のときにカブの部(小学4年生以下)でも優勝を飾った。

 岸田が自分たちの見立てに自信を持ったのは、この年にクラブで中国合宿を行なったときのことである。

 現在は日本生命の監督を務めている岸田の娘、聡子が北京に卓球留学していた縁から実現した合宿には、中国国内でトップクラスの子どもたちも参加していた。年上の中国選手には競り負ける展開が多かったが、現地の中国人コーチは長﨑の背中に視線を送りながら岸田にこう耳打ちした。

「今、ここにいる子どもたちのなかで、彼女が一番強くなるよ」

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