世界卓球の理不尽な「合同コリア結成」は
スポーツの本質をねじ曲げた (4ページ目)
突然の合同チーム結成に、グループリーグで韓国、北朝鮮と対戦したチームは感情の置き場に苦心しただろうし、何より、準決勝で対戦することになった日本チームには大きな動揺が走っただろう。
バイカート会長は「これはルールを超えた出来事だ」と語ったというが、世界選手権を主催する立場の組織や人間が、ルールを超えて尊重すべきものが存在するのだろうか。南北会談での決定に配慮するのであれば、3カ月後にジャカルタで開催されるアジア競技大会に向けて準備を進めるべきである。事前にしっかりとしたビジョンを描き、必要な調整をしっかりとすれば、南北の融和ムードを盛り上げる大会になるかもしれない。
明らかに「スポーツの本質」を曲げた今回のITTFの判断を批判の対象から救ってくれたのは、日本女子の素晴らしい振る舞いとプレーである。
「歴史的な一戦」と政治主導的なアナウンスが流れるなか、1番手に抜擢された伊藤美誠はさまざまなプレッシャーをはねのけ、初対戦となる韓国のチョン・ジヒを3-0で一蹴した。2番手の石川佳純は、リオデジャネイロ五輪の女子シングルス3回戦で敗れた北朝鮮のキム・ソンイをフルゲームの死闘の末に下した。
そして3番手の平野美宇も、アジアを制した高速卓球で韓国のヤン・ハワンを3-1で撃破した。1試合も落とさずに決勝進出を決めた彼女たちのプレーは、世界最高峰のコートを政治ショーの舞台からスポーツの舞台に引き戻してくれた。
強い精神力と卓越した技術、そして卓球という競技に人生をかけて打ち込んできたトップアスリートとしての矜持(きょうじ)を世界中の人たちに伝えたのである。あえて逆説的な言い方をすれば、彼女たちのプレーこそ、過去のピンポン外交の系譜につなげてもいい功績ではないだろうか。
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