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【Bリーグ10年目の開幕】35歳、比江島慎の輝きは増すばかり トップ選手としての実力と魅力に磨きがかかる宇都宮ブレックスの主役

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

比江島慎は35歳になってもその輝きが失われることはない photo by Kaz Nagatsuka比江島慎は35歳になってもその輝きが失われることはない photo by Kaz Nagatsuka

後編:ビッグクラブの足跡/宇都宮ブレックス

CSファイナル進出4回、優勝回数は史上最多の3度を誇る宇都宮ブレックスは、Bリーグ10年目を迎える2025-26シーズンも優勝候補だ。そのチームの顔は、35歳の比江島慎だ。

学生時代からエリートとしての道を歩み、20代早々に日本を代表する選手に。そして35歳となったいまもその評価は変わらない。オンコートとオフコートの人柄が乖離する魅力がその人気に拍車をかけているが、比江島のトッププレーヤーとしての輝きはまだまだ失われる気配すらない。

前編〉〉〉宇都宮ブレックスが放つ異彩のフランチャイズカラー

【「自信を失った夏」から実力、人気も再加速】

 コートを切り裂く意思と、試合後の当惑。必死の形相とはにかみ顔。圧倒的な人気と照れ。コート上とそれ以外とで見せる、なかば相反する人物像。

 もっとも、彼を見てきた人ならばそこに驚きを覚えることなどもはやない。そんな比江島慎特有の乖離こそが、大きな人気を集める理由の大きな部分を占める。

 比江島が宇都宮のジャージーを身にまとい始めてから、今シーズンで8年目になる。契約をしたのは2018-19シーズンの途中だった。豪NBLのブリスベン・ブレッツへ加入するも、3試合のみの出場にとどまった。2019年の夏にはNBAサマーリーグと、日本代表として中国でのFIBAワールドカップに参加し、いずれにおいても十全というところからはほど遠く、当人が「自信を失った夏でした」と述べるほどの失意の出来に終わった。

 つまり、比江島はブレックスの一員として必ずしも好スタートを切ったというわけではなかった。この頃の彼は30歳手前。到底、若手の領域ではなく、プロ選手としてはすでにベテランだった。そこからいまに至るまでの年月の間に、彼に対する人気がさらに加速していくと予想するのは困難だった。

 もちろん、2023年に沖縄で行なわれたFIBAワールドカップでの日本代表の躍進と彼自身の活躍や、それと連動したBリーグの人気の急上昇も比江島に当たる脚光をより強くした部分もあった。

 比江島のキャリアは、エリートのそれだ。小学校時代から頭角を現し、洛南高校、青山学院大学ではそれぞれ日本一に。プロ入り後はアイシンシーホース三河(現シーホース三河)に入団し、新人王や天皇杯優勝、ベスト5など早くから数々の栄誉に輝いてきた。

 シーホース三河時代の2017-18にはB1の最優秀選手賞(MVP)も手にしている。当時、チームメートには群を抜くシュート力を有する金丸晃輔(現佐賀バルーナーズ)がいた。スラッシャーの比江島と長距離砲の金丸の組み合わせは、リーグ最高峰のバックコート・デュオだった。ただその当時、Bリーグの人気はいまと比べるとかなり小さなものだっただけに、比江島が黒い三河のジャージーを着てプレーしていた姿の記憶は遠いものとなった。

 気がつけば、比江島は35歳となっていた。コート外でのゆるやかな人物像が、われわれに彼の年齢を感じさせないようにしている。比江島の何がすごいかといえば、早くから日本のトップ選手となり、そして長い年月を経ても、いまもってその形容が用いられていることだ。通念的にバスケットボールのような常に走り回り、高い身体能力と肉体の強さが求められる競技においては30歳頃から衰えが始まっていくとされている。上昇していた成長曲線が下っていくようになれば、選手たちはそれに応じてプレースタイルを変えたり、主役だった者は脇役の仕事を受け入れるようになっていく。

 なのに、比江島は変わらない。もちろんミクロのレベルでは肉体は下降線をたどっているのだろうが、高い技術と広く言われるふんだんな「才」は線の下降を下から押しとどめている。

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著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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