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河村勇輝が自己分析する現在地と課題 自らを客観視して考える最大の課題とは? (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【「身近な目標を達成してからこそ、その先が見えてくる」】

 キャンプまで遡っての約3カ月を振り返り、河村はサイズ以外の多くを備えた選手であることを示してきた。ディフェンス面ではやはり高さに欠けるが、見た目以上に強靭で押し負けない身体を持っている(渡米後も「体重は変わっていない」というが、ストレングスの強度が増した印象がある)。

 そのなかで、最大の課題はやはりジャンプシュートの精度向上、ゴール周辺のフィニッシュ力の強化だろう。特に現代のNBAで鍵となる3ポイントの成功率はNBAで18.2%、Gリーグでも23.5%に過ぎず、改善は必須だ。

「NBAで活躍していくために、3ポイントの確率は必ず上げていかないといけない部分です。相手の(ウィングスパンの)長さに慣れは必要です。あまりプレッシャーを感じないかなと思っている距離感でシュートを打っても思った以上に長く、コンテスト(邪魔)を感じることがすごくあるので」

 河村は渡米当初から「アメリカのバスケに慣れたい」と話していたが、シュート時の"相手ディフェンスとの距離感"は何よりも慣れが必要な部分に違いない。そこでのアジャストメントを進めれば、精度は自然と上がっていく。シュートが決まるようになれば、河村が"僕の強み"と語るドライブがより容易になる。

 勉強熱心な河村ならいずれその感覚も掴むだろうが、問題はそれをいつ頃までに果たせるか。好素材がいくらでも出てくるアメリカでの挑戦は、時間との戦いでもある。NBAではより迅速な適応が求められ、それを成し遂げられるかどうかこそが今後の見どころであり、試練になってくるのかもしれない。

「昔から僕は身近な目標を立て、それを達成したあとに見えてくるものがあると思っています。そういった形で今までバスケットボール(のキャリア)、人生を歩んできました。来年、再来年での本契約を目指しながら、今はありがたいことにツーウェイ契約をいただいているので、とにかく1年目はアメリカのバスケットボールに慣れ、NBAのコートに立ったときには全力でプレーして、Gリーグの試合に出た時には勝利に直結できるようなプレーヤーになれるように。そのふたつを目標にしています」

 河村の軌跡がハリウッド映画であれば、NBAデビュー、メンフィスの人気者になったところでストーリーは終了でもいい。そこでエンドロールが上がり、ファンから拍手喝采を浴びるだけの価値のある道のりは歩んできた。しかし、現実のバトルはまだまだこれからも続き、もちろん河村自身にもその心構えはできている。"ファン・フェイバリット"からさらに次のステップを目指し、より厳しく、それでいて楽しい日々が目の前に広がっているのだろう。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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