パリオリンピック男子バスケ フランスの専門誌編集長がホーバスジャパンを総括「戦う術をもっと学んでいく必要がある」 (5ページ目)
【オリンピックで見えた日本代表の課題】
── 世界との差が露呈した日本について、忌憚のない意見を聞かせてください。
「日本のいいことをたくさん述べましたが、少し批評もお伝えしたいと思います。日本は八村が中心で、渡邊はシューター、河村がマエストロ、ホーキンソンはペイントでフィニッシュができ、吉井はチームとして機能させる存在。彼らがチームの核だと話しました。しかし、日本には選手層の厚さが絶対的に足りていません。
八村がコートにいないと、それはなおさら見てとれましたし、渡邊やホーキンソンがいない場合も同様です。もちろん、主力が少なくても勝つことはできますし、実際にフランス戦はそうなりかけました。ですが、日程の長い大会であれば試合は続いていきますから、勝ち進んでいくためには最低8人から10人の強固なグループがなければなりません。
また、『ペイントを守る』という点も課題です。ホーキンソンはいいオフェンスを持っていて、背が高くディフェンスでもブロックショットができる選手です。ただ、ペイントを守るという点では、支配的な選手ではありません。
強力なフロントコート陣がいない場合、オフェンスで得点をしたあと、すぐに自陣のペイントまで戻って守るのは本当に大変なことです。大きな体のフロントコート陣がいれば、相手のオフェンスでもファウルをもらえますから。
最後に、日本は国際大会で戦う術(すべ)をもっと学んでいく必要があると思います。速いテンポでプレーする日本の試合はたしかに楽しいですし、それが彼らのスタイルだとも理解してします。ですが、日本は速さを使ったひとつのテンポでしかプレーできないようにも見えます。
速くプレーすることは、悪いことではありません。ですが、勝っていても負けていても、シュートがずっと入り続けることはありません。試合のなかで流れを失ってしまった時にリズムをコントロールして、いかに傷口を小さくできるかが肝要です。
フルスピードでプレーをすることは問題ありませんが、チームの調子がよくない時もあります。そういう場合でも、ゲームをコントロールすることで試合に勝つことはできるのです」
<了>
※月刊バスケットボール専門誌『BASKET』=2016年創刊。フランスを中心としたヨーロッパとアメリカに関するトピックをカバーしている。選手の人物像に迫ることを重視し、インタビューやポートレートなども掲載。キャスビル氏は『Basket News』や『Basket Hebdo』でジャーナリストとして活躍し、『BASKET』創刊時から編集長を務めている。
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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