河村勇輝のNBA挑戦を可能にさせたのは何か 韓国との連戦で見せた「全力で挑む姿勢」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「この出来だとベスト8は難しくなる」】

 韓国戦では、リードされた状況で、鬼気迫る表情でコートに立った河村は次々とシュートを決めた。苛立った韓国のファウルを受けると、フリースローを確実に沈め、一時は逆転にまで持ち込んでいる。ディフェンスでも、2度続けてコートに倒れ込んでボールに食らいついていた。2度目はバックコートバイオレーションを取られたが、必死の形相だった。そこに、彼の生き方が集約されていた。

 7月7日、有明アリーナ。韓国との再戦で、日本は88-80の勝利を収めている。きっちりと借りは返した。

 河村はチーム最多9アシストで獅子奮迅の活躍を見せた。第2クォーターには、ジョシュ・ホーキンソン、ジェイコブス晶への連続アシストを決め、自らもペイントアタックからジャンプショットで逆転に貢献した。韓国がたまらず反則覚悟で止めに来たが、それをひらりとかわす。第3クォーターに入っても、ホーキンソンに死角を突いたお膳立て、3Pシュートは連続で成功し、追いすがる韓国を突き放した。

 ところが、試合後の河村は少しも喜んでいなかった。

「まだ十分ではありません。この出来だとベスト8という目標(達成)は難しくなる。これが本番じゃなくてよかった、というのが正直なところ」

 理想としているイメージに達していないのだろう。そこに辿り着けるまで、彼はやり続ける。

「韓国戦は、パリ五輪で同じグループのドイツ、フランスを想定し、プレーしようと思っていました。その意味では足りなくて。ドイツ、フランスとはクロスゲームになるはずで、ワンプレー、1秒が大事になってきます。ターンオーバーもそうだし、ディフェンス強度や考え方からもっと意識してプレーしないと。また、ビッグマンひとりで守るのではなく、ギャップに入って全員で守る意識とか......」

 ミックスゾーンで無数のレコーダーを向けられた河村は、次々に課題を挙げた。

「一番の課題? うーん、そうですね。キリがないです(苦笑)。すべてにおいて、オフェンスも、ディフェンスも、修正したいことはたくさんあるので」

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