広島ドラゴンフライズ球団社長・浦伸嘉氏が語る初優勝に至るまでの背景「重要なのは現場とフロントが両輪で回っていけるかどうか」 (2ページ目)
【カネがあれば優勝できるわけではない】
球団社長の浦伸嘉は、優勝を「できすぎ」と振り返る photo by Kaz Nagatsukaこの記事に関連する写真を見る プロスポーツはビジネスだ。換言すれば、カネだ。広島においては2018―19から外国語学校の経営で知られるNOVAホールディングスがオーナー会社となり、資金力を上げた。それによって選手の補強がしやすくなったことも当然、今回の優勝の要因に欠かせないところだ。
だが、カネがあれば優勝できるわけではないことも事実。現場(チーム)とフロントのベクトルが同じ方向を向いていなければ勝てないことは、世界中のさまざまなスポーツにおいて、歴史が証明している。
浦氏は、手元にある資金をどれだけ効率的に使うかが、チームの戦績にも、球団経営にも肝要であると強調した。
「スポーツクラブにとって一番重要なところは、チームとフロントが両輪で回っていけるかどうか。それができないと、成果は出ないと思います」
果たして、広島ドラゴンフライズはBリーグ制覇という形で結果を出した。しかし、経営者として永続的な成功を目指す浦氏が言うところの「成果」といえば、少し違いそうだ。
浦氏は、今回のファイナル進出を「できすぎ」と評した。当初は事業規模の拡大を狙ったリーグ再編計画「B革新」に伴い、2026年から最上位の枠組みは「Bプレミア」と呼ばれる。広島はすでにこのプレミアへの参入意思を表明しているが、リーグ制覇はプレミアの初年度から2年目あたりでの達成という道筋を描いていた。だからこそ、「できすぎ」と表現したのである。
年間の売上12億円(2022-23の広島の売上は約14億4000万円だった)やホームでの平均集客4000人(2023-24の広島は前年から約1200人以上増の平均4600人を記録した)という「Bプレミア」参入要件をクリアできる数字は残している。5000席以上を要するホームアリーナについても、当面は改修をしたうえでグリーンアリーナを暫定的に使用し、2033年ごろから新アリーナに移行していくことを目指している。
ファイナル進出にも、経営者として冷静な受け止め方をした浦社長だが、「広島ドラゴンフライズ」というブランドを全国に知ってもらう機会になることについては、率直に喜んだ。優勝を遂げたことで、その効果はさらに大きくなったはずだ。
チームとフロントが同じベクトルを向く広島は、これから、Bリーグにおける「西日本での雄」たる地位を確立していくのではないか。そんな可能性も感じる。
そうなれば誰も彼らが「よもや」優勝をするのではないか、などと言うまい。
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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