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富永啓生が選んだ「日本代表経由NBA入り」の道筋 それはパリ五輪への断固たる決意の表われ

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

富永啓生はこの夏、パリ五輪での活躍に注力する photo by ZUMA Press/AFLO富永啓生はこの夏、パリ五輪での活躍に注力する photo by ZUMA Press/AFLOこの記事に関連する写真を見る

 昨年のW杯で、バスケットボール男子日本代表のパリ五輪出場権獲得に貢献した富永啓生がアメリカ・ネブラスカ大学を卒業。当初より希望していたNBA入りを目指すために選んだルートは、その登竜門と言えるNBAサマーリーグではなく、日本代表のパリ五輪で自分をアピールすることだった。

 その決断の背景には、富永が自身を俯瞰した冷静な判断、そして日本代表、NBA入りへの熱い思いがあった。

【NBAの登竜門・サマーリーグを見送った理由】

 腹はくくった、といったところか。

 今、日本のバスケットボール界で最も気になる男のひとり、富永啓生が日本に戻ってきた。7月開幕のパリオリンピックへ向けて合宿に励む日本代表チームの活動に参加するためだ。

 3月に行なわれた全米大学選手権(NCAAトーナメント)をもって、3年間在籍してきたネブラスカ大学でのプレーを終えた23歳は、子どもの頃からの憧れであるNBA入りを目指しているが、このタイミングで帰国をしたのは、冷静かつ現実的な判断をしたと言っていい。

 5月終盤からサクラメント・キングス、ロサンゼルス・クリッパーズ、シカゴ・ブルズと3つのNBAチームのワークアウトに呼ばれ、得意の3Pシュートを筆頭とする自身の技量を披露してきた。

「自分のストロングポイントは出せたかなと思います。自分が見せたいプレーというのは見せられたかなと思うので、ワークアウトでの手応えはあります」

 6月6日、富永は日本での帰国会見で、そう語った。

 では、そのことで富永のNBA入りが有望視されているかといえば、そうではない。6月26日からNBAドラフトが開幕するが、わずか2巡しかない、つまりは世界の60名のタレントしか選抜されない場で、彼の名前が呼ばれる可能性は低いと見られている。

 そのことは、5月中旬に78名のドラフト候補の能力を見るためのイベント・NBAドラフトコンバインに富永の名前がなかったことが示している。

「ドラフトコンバインにも招集されなかったりしたので、ドラフトというところは、今はちょっと難しいかなと」

 富永は、静かにそう話した。

 しかし、それ自体が特段、大きな驚きだったわけではない。富永にNBAの可能性があるとすれば、それは2023-24まで6年間NBAでプレーし、来シーズンより日本のBリーグ入りの意思を表明している渡邊雄太のように、ドラフ外からワークアウトやサマーリーグでのプレーを経て、というのが現実的な道だと思われてきた。

 ところが富永は、たとえその機会が訪れたとしても「サマーリーグでのプレーはしない」と明言した。この段階でそう言いきったことで、関係者からやや驚きの反応を引き出している。

 サマーリーグは、ドラフトされた新人たちがNBAルールに慣れるため、またドラフト外選手や、その他NBAロスター入りの境目にあるような若手選手たちの能力を見極めるといった目的で、毎年開催される。同リーグは全米の複数の会場で催されることが多いが、最も多くのチームが参加する主会場はラスベガスで、今年は7月12日から22日の日程で行なわれる。7月27日からのパリ五輪の男子バスケットボールとは重なりはしないものの、日程は近接している。

 日本からはかつて、田臥勇太、竹内公輔、比江島慎(すべて宇都宮ブレックス)、川村卓也(元シーホース三河など)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、渡邊、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)、馬場雄大(2023-24は長崎ヴェルカ所属)らが出場している。

 富永のNBAへの憧憬は、強い。が、そこに到達する道筋として、彼は、サマーリーグの話があったとしても参加しないという決断をしたのだ。

 腹をくくった、というのはそういうことだ。

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著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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