馬瓜エブリンが「人生の夏休み」を経て変化したふたつのこと 「吠えるリーダー」となってパリ五輪へ!

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 加藤誠夫●写真 photo by Kato Yoshio

馬瓜エブリンは、リーダーとしての役割も大きい photo by Kato Yoshio馬瓜エブリンは、リーダーとしての役割も大きい photo by Kato Yoshioこの記事に関連する写真を見る

 バスケットボール女子日本代表がパリ五輪出場権を獲得した2月の世界最終予選、大舞台で確かな数字を残した4月のWリーグプレーオフ。女子バスケットボール界を代表する馬瓜エブリンは2024年、その存在感を大いに見せつけている。

 東京五輪では史上初めて銀メダルを獲得したメンバーに。大きな偉業を成し遂げたあと、アスリートしては異例の「人生の夏休み」を取得し、約1年間コートから離れた時間は、心身ともに自身をひと回り成長させる貴重な時間だったことを証明し見せている。

 今、視線は真っすぐにパリ五輪のコートへ。奢ることなく、まずは代表メンバー入りを目標に掲げ、"ブランニュー・エブリン"に磨きをかけている。

【さらに大きくなった存在感】

 6月2日に29歳の誕生日を迎えた馬瓜エブリン(以下、エブリン)。自ら宣言して1年の休養を取った「人生の夏休み」を経て、バスケットボールコートに帰ってきたのは2023年夏のこと。「スポーツ選手が休むことは怖かったけど、私にとっては必要な時間でした」と、これまでとは違う価値観を得て、パワーアップしての復帰だった。

 復帰後の新天地となったのはデンソーアイリス。主力として挑んだ昨年12月の皇后杯では、89-56の大差でENEOSサンフラワーズを下し、悲願の初優勝に大きく貢献した。12得点、8リバウンド、4アシストの働きぶりもさることながら、大会MVPを受賞した髙田真希に「優勝の要因はチームの士気を高めてくれるエブリンが加入したこと」と言わしめるほどの存在感を示した。これまで、どこか殻を破れずにいたデンソーにとって、ムードメーカーであるエブリンの存在が、大きな起爆剤となっていたのだ。

 4月に行なわれたWリーグのファイナルでは、3戦にもつれる激闘の末に富士通レッドウェーブに敗れたものの、エブリンの活躍はプレーオフを通して光っていた。ファイナル3戦で平均20.3得点、6.6リバウンドとフル回転。プレーオフのベスト5に選出されている。

 今年2月に開催されたOQT(オリンピック世界最終予選)では、銀メダルを獲得した東京オリンピック以来となる代表復帰戦となった。この大会でもエブリンは、強豪のスペインとカナダ相手に勝負どころでシュートを決め、パリ行きを手繰り寄せるキーマンとなったのだ。

 OQT前には、久しぶりの日の丸を背負うことや、恩塚亨へッドコーチ(HC)体制では初参戦であること、また手薄となったインサイドのポジションを任されたことで、「サイズのある欧米チームを相手にインサイドを守るのは不安がないと言えばウソになります。でもやるしかない」と覚悟を決めて大会に臨み、そして、予想以上の活躍を見せた。

 FIBAランキングが上のスペインやカナダを下せたのは、日本が『走り勝つシューター軍団』というコンセプトを実践したのはもちろんのこと、エブリンが想像以上とも言える活躍をしたことも大きい。スペイン戦では20得点、カナダ戦では21得点と大爆発。東京オリンピック後に席を空けていたエブリンのデータは、敵将たちにインプットされておらず、ライバルたちを混乱させたのだ。

1 / 3

プロフィール

  • 小永吉陽子

    小永吉陽子 (こながよし・ようこ)

    スポーツライター。「月刊バスケットボール」「月刊HOOP」のバスケ専門誌編集部勤務を経て独立。男女日本代表、Bリーグ、Wリーグ、高校バスケの現場を取材し、国際大会の取材も幅広くカバーしている。著書に「女子バスケットボール東京2020への旅」「必勝不敗 能代工バスケットボール部の軌跡」(ベースボール・マガジン社)。構成書に「普通の子たちが日本一になった」「プライド」(日本文化出版)など多数。ムック本の執筆、編集なども多数手掛けている。

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る