馬瓜エブリンが「人生の夏休み」を経て変化したふたつのこと 「吠えるリーダー」となってパリ五輪へ! (3ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 加藤誠夫●写真 photo by Kato Yoshio

【唯一無二のスタイルを目指して】

 バリ五輪は目前。今はシェイプされた体と、3ポイントを武器に、選考合宿に挑んでいる。もちろん、サイズ(高さ)のない日本としては、エブリンのパワープレーとリバウンドは必要不可欠で、内外角をこなせる選手として、エブリンにしかできないプレーを見つけるつもりだ。

 また、エブリンと言えばムードメーカーであるため、チームの士気を高める役割も担う。OQTで痛恨の敗戦を喫した2戦目のハンガリー戦では「エブリンの吠えが足りなかった」と司令塔の宮崎早織に指摘され、最終のカナダ戦では、大声を張り上げて仲間を鼓舞し、自らもコート上で爆発した。ハンガリー戦では1得点に終わってミスも多かっただけに、こうした波をなくさなくては、強豪ぞろいのオリンピックで戦えないことは重々承知している。

 だからこそ「選手としてもっと高みに上るために、さらに考えてプレーしなきゃいけない。オリンピックはOQTとは別物の大きな山。その山にのぼるために、試行錯誤するつもりです」と、これまでの経験を発揮して、パリ五輪代表入りへの選考をつかみ取るつもりだ。

 そのカギとなるのは「リーダーシップを取ること」だと言う。昨年は「『鼓舞』というワードを使って仲間を奮い立たせてきましたが、今年はOQTを経験して、少しずつ代表でもリーダーシップを取ることができるようになったので、自分がいかに前に立ってやれるかです」

「人生の夏休み」と題して、一度バスケットボール界の外に出たエブリンは、さまざまな出会いと経験を経て、パワーアップして帰ってきた。エブリンが"吠えるリーダー"になったとき、日本の女子バスケはもっと強くなれるはずだ。

【Profile】馬瓜エブリン(まうり・えぶりん)/1995年6月2日生まれ、愛知県出身。東郷中→桜花学園高→アイシンウィングス→トヨタ自動車アンテロープス→デンソーアイリス。ポジション:パワーフォワード(PF)、身長:180cm。日本代表としてオリンピックには2021年東京大会(準優勝)、ワールドカップ(世界選手権)には2018年スペイン大会に出場。今季は皇后杯で初優勝、Wリーグでは準優勝し、プレーオフベスト5を受賞。ガーナ人の両親のもとに生まれ、14歳の時に家族で日本国籍を取得。

プロフィール

  • 小永吉陽子

    小永吉陽子 (こながよし・ようこ)

    スポーツライター。「月刊バスケットボール」「月刊HOOP」のバスケ専門誌編集部勤務を経て独立。男女日本代表、Bリーグ、Wリーグ、高校バスケの現場を取材し、国際大会の取材も幅広くカバーしている。著書に「女子バスケットボール東京2020への旅」「必勝不敗 能代工バスケットボール部の軌跡」(ベースボール・マガジン社)。構成書に「普通の子たちが日本一になった」「プライド」(日本文化出版)など多数。ムック本の執筆、編集なども多数手掛けている。

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