富永啓生は日本男子バスケの救世主となるか。富樫勇樹「彼の得点力は日本の武器になる」

  • 小永吉陽子●文 text by Konagayoshi Yoko
  • photo by APP/AFLO

「いい3ポイントシューターを探している」

 バスケットボール男子日本代表のヘッドコーチ(以下HC)トム・ホーバスは、そう言って今夏の強化合宿をスタートさせた。男子代表は候補選手を総勢42名発表し、7月と8月の前後半に分けて活動中だ。前半の7月組は来年に開催するワールドカップの予選2試合(オーストラリア、チャイニーズ・タイペイ戦)と7月12日に開幕するアジアカップでプレーすることになる。

バスケ男子日本代表の得点源として期待される、若きシューターの富永啓生バスケ男子日本代表の得点源として期待される、若きシューターの富永啓生 7月1日に行なわれたワールドカップ予選のオーストラリア戦では、格上が繰り出す強力ディフェンスの前にまったく歯が立たず、52−98で完敗。いや、惨敗といっていいほど、チームとして何も遂行できなかった。そのなかで唯一の希望となったのが、この日にフル代表のデビューを飾った21歳の大学生、富永啓生だった。

 18得点、2アシスト、2スティール。得意の3ポイントは11本打って5本成功と成功率も高かった。2日後、89−49で勝利したチャイニーズ・タイペイ戦では、3ポイントは9本中2本と確率は低かったが、チーム最多の17得点をマーク。はじめてのフル代表で日の丸をつけても臆することなく、2戦ともにチーム最多得点をマークしたという点では、インパクトを残したといえるだろう。

 日本代表デビューを終えて富永は、「U18代表以来となる5人制の代表になり、やっとこの舞台に立てたという思いがあります。オーストラリア戦ではフィジカルに押されてタフショットになってしまったけれど、そこはもっとチーム練習をして、ここから日本を強くさせていきたい」と気持ちを高ぶらせていた。

 ただ、補足情報としてチャイニーズ・タイペイは、B代表といえるべき布陣で挑んでいた。日本も若手が多かったが、チャイニーズ・タイペイはそれ以上に若く、代表キャリアの浅いチームで、なおかつ出発直前に帰化選手を含む2人がコロナ陽性反応を示して渡豪できず、現地でも2人の陽性者を出したために、4人の主力が欠けた状態で戦っていた。そんな格下相手にチームで16個もの失策を犯してしまい、3ポイントの確率も27.9%と低迷した内容では、不安要素を露呈したことも事実である。男子代表は今、メンバー選考と戦術を早急に確立させている過程だ。

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