「理想の上司」トム・ホーバスHCが説く男子バスケ日本代表のやるべきスタイル。「強くなるための魔法はない」 (4ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

 肝要なのは、自分の下で働いてくれる人たちへリスペクトを払いながら接することです。一方で、彼らには自身の仕事をきっちりとやってもらう必要があります。それこそがリーダーシップだと言えます。

 私にはやるべき仕事があります。壮大な挑戦が待ち受けています。ですから、そういった周囲の声や評価を気にしている暇はありません。それに、周りの人たちが私について何を言おうと、それをこちらはコントロールできません。コントロールできるのは、自分に与えられた仕事だけです」

【連敗によって生まれた一体感】

---- 男子代表での初陣では、女子代表の時ほど選手を叱りつけたり、大声を出す場面はなかったように思えました。

「就任して間もないコーチがいきなり選手たちを怒ったり、叱ったりすることはできません。それができるようになるためには、関係性を築くことが先決です。選手たちとの信頼関係がなければ、コーチが叱っても選手たちは耳を貸しません。私は今、その関係性を構築している最中なのです。

 その意味では、仙台では連敗したとはいえ、大きく歩みを進めたと思っています。なぜなら、苦戦を強いられるという体験を共有するなかで、選手たちがよりひとつになることができたからです。ここから選手たちが、より一体感を持つようになるでしょう。

 今後の日本男子は、もっと鼻っ柱が強く、アグレッシブで、時には怒りを表し、フィジカルである必要があります。簡単に相手に屈するようなチームでは勝てないですから」

【強くなるのに近道はない】

---- 仙台での試合が終わったあと、ファンに向けて「今しばらく我慢をしてください」と言っていました。その「我慢」はどれくらいになるでしょうか?

「どれだけかかるかは明言できませんが、言えることはWindow1前の合宿で8日間しかなかったにも関わらず、私たちは思っていたよりもはるかに多くのことを学び得ることができました。我々の歩みは、進み始めたばかりです。今しばし我慢を要するかもしれませんが、やがて状況が好転すると考えています。

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