東京五輪メンバー落選、強豪から最下位チームへの移籍。バスケ辻直人が厳しい環境を選んだ理由
日本代表メンバーの経験もある、広島ドラゴンフライズ・辻直人 Bリーグ、西地区では広島ドラゴンフライズが首位のシーホース三河にゲーム差1(7勝4敗※11月7日現在)と好調だ。ホームゲームは8試合6勝2敗と、なかなかの強さを見せている。そのチームを引っ張るのが、辻直人である。今年6月、川崎ブレイブサンダースから移籍し、昨年B1リーグ西地区最下位で、わずか9勝(46敗)しかできなかったチームを改革し続けている。辻が見据えている広島の未来と自身のこれからとは......。
「自分はレベルアップしたいと思って広島に来ました。自分のために、チームのために、もっと成長していきたい」
辻は、「成長」「進化」に貪欲な姿勢を見せるが、名門・川崎からの移籍のキッカケになったのは、まさにその部分だった。
「川崎には、長年育ててもらった恩がありますし、情もありました。でも、ずっと個人としてもっと成長したいと思っていました。そのためには環境を変えることが一番だと思ったんです」
川崎は、チームとしての完成度が高く、環境面も充実し、ファンも熱烈で何ひとつ不満はなかった。一方、広島は、昨シーズンは最下位。移籍の話をもらった時も「インサイドが強い」くらいの印象しかなかった。環境面もクラブハウスがなく、練習の専用コートもない。それゆえ、最終的な決断をする際、多少、迷いも生まれた。そんな時、サッカー選手本田圭佑のTwitterが辻の背中を押してくれた。
「環境を変えないと根本的に自分を変えられない。本当にタイムリーで、自分に言われているように感じました」
クラブからは「辻選手がチームを引っ張ってほしい」と言われた。自分が思うようなやり方で自身と日本人のレベルアップが実現できるかもしれない。社会貢献活動もさらに力を入れてやっていける。未来に魅力を感じて広島に行くことを家族に話すと、幼稚園に通っている長男は「大丈夫、僕が頑張ればいいだけだから」と父の決断を尊重してくれた。
「家族があと押ししてくれたのは心強かったですね。特に長男の言葉には泣きそうになりましたけど、いざ広島に行って現地の幼稚園に通うと、『川崎のほうがよかった』と泣きながらぶつぶつ言っています(笑)」
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