【ラグビーW杯】涙の3勝目! この勝利が2019年W杯へのスタート

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤 龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 もう五郎丸歩(ヤマハ発動機)は涙をこらえることができなかった。歴史的なW杯3勝目を挙げながらも、目標の決勝トーナント進出を達成することはできなかった。「複雑ですね。我々の...」と漏らすと、言葉に詰まった。右手の平で顔を覆った。

「目標はベスト8だったので......。悔しい......。達成感はあまりなかった。一人もこれで満足している人はいないと思います」

歴史を作ったジャパンの選手たち。ピッチに歓びの歌が響いた歴史を作ったジャパンの選手たち。ピッチに歓びの歌が響いた
 
 ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会の日本代表の1次リーグ最終戦、米国戦である。11日(日本時間12日)の英国グロスター。1日前にスコットランドが勝ち、日本の同リーグ敗退が決まっていた。前夜、リーチ マイケル主将(東芝)は選手ミーティングでこう言ったそうだ。

「これで準々決勝にはいけないけど、自分たちのプライドを懸けて戦おう。世界に日本がどれだけすごいか見せよう」と。

 実は試合前、ロッカールームではエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が、めずらしく涙ぐみながら檄を飛ばした。W杯後に退任が決まっているHCにとって、最後の日本代表の指揮となるからか。誰もがこの試合の重要さを理解していた。

 スタジアムは異様な熱気に包まれた。スタンドからは「ニッポンコール」と「USAコール」が夜空に飛び交った。これまで3敗の米国もまたプライドを前面に押し出してきた。先の南アフリカ戦で主力を温存してまで、この日本戦にすべてを懸けてきた。互いの気迫が激突し、スクラムが崩れる。気負いからか、ハンドリングミスも目立った。

 ただ、4年間のハードワークの積み重ねが、接点の攻防に出た。連携が崩れても、一人ひとりが前に出た。倒れてもすぐに起き上り、相手に襲い掛かった。PGで先行されると、スタンドオフ(SO)小野晃征(サントリー)がラインの裏に抜け出し、キックでボールを転がした。

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