角田裕毅、カタールで苦戦 過酷なレースで溜まっていったフラストレーションの正体 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【戦略巧者ぶりでも負けてポジションを失った】

 さらに悪いことに、アルファタウリは4セットの新品を持つ優位性を生かそうと、レース序盤から早め早めのピットインを仕掛け、ミディアムを18周の最大周回数まで使わずに9周、13周と早々に切り捨てていった。その結果、ペースが遅いハードで走る周回数が長くなり、ライバルとの戦いは余計に苦しくなった。

 結論から言えば、タイヤ周回数制限が設けられたことで全車がフルプッシュのレースになり、タイヤマネジメントの勝負ではなく、マシン本来の純粋なペース差の勝負になった。

 端的に言えば、予選と同じ勢力図になる。こうなると、アルファタウリとしては苦しい。

 予選の一発は角田の腕でどうにかトップ10を狙うところにつけているが、それを57周続けることはできない。マシンとしては10台中8〜10番手を争うところにいるアルファタウリでは、純粋なペース勝負になると上位勢はおろか、アルピーヌ勢にも勝ち目はない。ウイリアムズにも及ばず、今回はアルファロメオとの争いもハードタイヤでは厳しかった。

 さらには、セーフティカー中にピットストップを済ませるといった戦略巧者ぶりでもボッタスやランス・ストロール(アストンマーティン)、ケビン・マグヌッセン(ハース)に負け、ポジションを失った。その結果が15位だ。

「マシンバランス自体は悪くありませんでしたけど、単純に十分な速さがなかったというだけで、どこでタイムロスしているかもわかっています。ストレートの速さが十分ではなくて、それでもすでにグリップレベルとしてはギリギリの状態だったので、これ以上ダウンフォースを削ることもできません。

 その点はさらに改善が必要だと思います。改善するのは簡単ではないと思いますが、今後に向けて何ができるかを詳しく見ていきたいと思っています」

 シンガポールGPで投入したアップグレードは、AT04の底上げを果たしたことは間違いない。しかし、まだ十分ではない。それをはっきりと突きつけられた過酷なカタールGPだった。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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