角田裕毅、カタールで苦戦 過酷なレースで溜まっていったフラストレーションの正体 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【なぜアルファタウリは優位性を生かせなかった?】

 本来なら全力で走り続けて3回ピットストップするよりも、タイヤをいたわってピットストップを2回に抑えたほうが早くレースを走りきることができるため、全車がその戦略を採る。しかし1セットが最大18周となれば、最初から最後まで全力で走るしかない。そのため、決勝レースは非常にタフな状況に陥った。

 加えていうなら、こうしたフィジカル的にタフな状況になることは土曜になってからわかったことで、金曜の時点でマシンやコクピットの冷却はそれに対応したものではなかった。そしてスプリント週末ゆえに金曜夜の予選でパルクフェルメ保管となり、それ以降、マシンの仕様を変更することができなかった。

 その結果、ドライバーたちはこの異例の過酷なレースに直面することになったのだ。

アルファタウリのマシンに速さはなかったアルファタウリのマシンに速さはなかったこの記事に関連する写真を見る この予想外のタイヤ周回数規制は、アルファタウリにとって不利に働くことになった。

 土曜のスプリントシュートアウトはSQ1で早々に敗退した角田は、SQ2で使うはずだったミディアムを新品のまま温存することができた。そして金曜に使っていなかった2セットのハードと1セットのミディアムもあり、新品が計4セットもある状態で決勝に臨むことになった。

 18周制限が設けられたことで、実質的に3ストップ以上、つまり4セットのタイヤを使うことが義務づけられた決勝において、これは有利と思われた。なかには新品2セット以外は残り12〜13周程度しか走行できない中古のタイヤしか持っていないドライバーもいたからだ。

 しかし、アルファタウリはその優位性を生かすことができなかった。

「タイヤ自体は新品を4セット持っていたので、アドバンテージがあったと思います。足りなかったのは、単純にペースです」

 ミディアムのペースは悪くなかった。直接のライバルだったアルファロメオ勢と比べても、同等かそれ以上だった。しかし、ハードに履き替えてからのペースが遅く、じわじわと前とのギャップが広がっていった。

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