角田裕毅は8位でフィニッシュできる可能性もあった...「完全に誤った」アルファタウリの戦略
「セーフティカーのタイミングが悪かったですね」
カナダGP決勝を14位で終えた角田裕毅は、怒気を含んだ声で言った。
「そのせいで思っていたほどポジションが上げられませんでした。あれがなければ、けっこう上がっていたと思いますし、トップ10も狙えたかなと思いましたけど」
走路妨害によるペナルティを受けて、19番グリッドからのスタートを強いられた。そのため角田は1周目にピットインしてタイヤ交換を済ませ、ひとり単独で走る戦略を採った。アルファタウリは予選よりもレースペースのほうが速く、集団のなかでライバルに抑え込まれて走るより、誰にも邪魔されず走ったほうがいいと判断したからだ。
角田裕毅の戦略は順調かと思ったのだが...この記事に関連する写真を見る そこで本来の速さをフルに発揮して走ることができれば、集団に埋もれて走り続けたライバルたちがピットインする時には、前に出ていることができる。ここからハードタイヤで最後までノンストップで走りきれば、大きくジャンプアップして入賞圏でフィニッシュすることができる。
決して簡単な戦略ではないが、後方スタートの不利をひっくり返すには、この戦略しかなかった。
「アグレッシブな戦略を採ってフリーエアで自分のペースで走って......という戦略だったんですけど、セーフティカーが出るまではうまくいっていたと思います」
ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)のクラッシュを受けて、12周目という想定よりも早いタイミングでセーフティカーが入った。5台を除いてほぼすべてのドライバーがピットインを行ない、角田は13位までポジションアップを果たした。
本来なら20〜25周目あたりまで走っていたはずで、そうすれば角田はもう少しタイムを稼ぐことができ、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)やマクラーレン勢より前の10位まで浮上できたはずだった。
それに加えて、セーフティカーでギャップが縮まってしまったことでDRS(※)トレインに飲み込まれてしまい、誰もオーバーテイクができず身動きが取れない状態になってしまったことも痛かった。
※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。