岩佐歩夢はF1参戦へ「チャンス十分」。中野信治が若手スターを望むワケ「ペイドライバーに頼る必要がなくなり、健全な世界に」

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

中野信治 F1 2022総括と2023展望
後編「次世代の台頭」(全3回)

 DAZN(ダゾーン)で解説者を務める元F1ドライバーの中野信治氏は「2023年はレッドブルとメルセデスによるタイトル争いが2年ぶりに再燃する」と予想する。

 同時に新しいシーズンは、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)やローガン・サージェント(ウイリアムズ)をはじめとする、若い才能にも注目しているという。

 日本のファンにとっては、F1直下のF2参戦2年目となる岩佐歩夢選手が、F1参戦の道を切り拓けるのかどうかも大きな見どころになりそうだ。

F1昇格を目指す岩佐歩夢選手。大阪府出身の21歳 photo by Atsuta MamoruF1昇格を目指す岩佐歩夢選手。大阪府出身の21歳 photo by Atsuta Mamoruこの記事に関連する写真を見る◆ ◆ ◆

【F1には若手の活躍が必要】

中野信治 2022年シーズン限りで4度の世界王者に輝いたセバスチャン・ベッテル(35歳)が引退し、F1通算8勝のダニエル・リカルド(33歳)もマクラーレンのシートを失いました。

 リカルドに代わってオーストラリア人のオスカー・ピアストリ(21歳)がデビューを果たします。また、ウイリアムズからはアメリカ人のローガン・サージェント(21歳)、アルファタウリからは2019年F2チャンピオンのニック・デ・フリース(27歳)がそれぞれ参戦することも決まっています。

 ハースからはかつてルノーやレーシング・ポイント(現アストン・マーティン)で活躍した35歳のニコ・ヒュルケンベルグが復帰しますが、2023年シーズンのドライバーラインナップは若いドライバーが増えた印象です。

 ここ数年、F2などで好結果を残したドライバーがなかなかF1にステップアップできない状況がありましたが、新しいスターが入ってくれば見ている側はワクワクしますし、どんな世界でも新陳代謝は必要です。

 2021年のF2チャンピオンを獲得したピアストリ、2022年のF2でランキング4位に輝いたサージェントがどういう走りをするかというのは楽しみですし、F1の今後を占う意味でも非常に注目しています。

 彼らがいきなり活躍すれば、F2ドライバーでも通用するんだという認識が広まって、他のチームが若い選手を積極的に使っていくという流れが加速していくと思います。

 今、アメリカ資本のメディア企業「リバティ・メディア」のもとでF1はSNSやさまざまなメディアをうまく活用し、世界中に新しいファンを増やしています。

 若くて才能にあふれるドライバーと、フェルナンド・アロンソやルイス・ハミルトンのような強くて、キャラクターがあるドライバーでなければ生き残れない世界になっていけば、F1はスポーツとビジネスの両面でもっと盛り上がっていくと思います。

 40歳をこえてもなお闘争心と一流の能力を兼ね備えたアロンソのような歴戦の王者に、若いドライバーたちが戦いを挑むという図式は、スポーツとしてもエンターテイメントとしても文句なしに面白いと思います。

 それでF1人気がさらに高まって、ビジネス規模が拡大すれば、チームにスポンサーがつき、リバティ・メディアから各チームに支払われる分配金も増えます。そうすれば資金不足に悩む下位チームが資金を持ち込む「ペイドライバー」に頼る必要もなくなります。

 その結果、本当に才能ある若手ドライバーが参戦するチャンスが広がり、F1はより健全な世界になっていくと思います。

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