岩佐歩夢はF1参戦へ「チャンス十分」。中野信治が若手スターを望むワケ「ペイドライバーに頼る必要がなくなり、健全な世界に」 (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【岩佐歩夢はF1へ「十分チャンスある」】

 僕は今、ホンダの若手育成を担当させていただいていますが、最近の若いドライバーたちは本当に器用で、能力が高い。僕の若い頃とは比べものにならないくらい、みんなすばらしい感覚を持っています。

 そのなかでも2022年のF2で2勝を挙げて、ランキング5位になった岩佐歩夢選手は、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(前・鈴鹿サーキットレーシングスクール)の校長を務める(佐藤)琢磨と僕だけでなく、講師陣全員が認めた逸材です。

中野信治氏 photo by Murakami Shogo中野信治氏 photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る F2参戦2シーズン目となる2023年、岩佐選手がきっちり結果を残して、スーパーライセンスを獲得することができれば、F1の参戦の道が開ける可能性があります。チャンピオンを獲得するのはハードルが高いですが、チャンスは十分あると思っています。

 現在21歳の岩佐選手は2019年にスクールでスカラシップを獲得したあと、我々の期待どおりの成長をしてくれています。ドライバー育成は目利きの世界。どういう才能があればF1ドライバーになれるという確固たるエビデンスがあるわけではないですし、世界で活躍できる選手になるための育成法が確立されているわけではありません。

 とはいえ、僕自身、世界のさまざまな舞台で経験をし、たくさんの若いドライバーたちを見てきましたので、こういう選手は通用するだろうな、というものが何となく見えてきます。

 岩佐選手で言えば、走りの才能はもちろんですが、何事にも真面目に取り組む性格を僕は高く評価しています。自分に足りないものは何なのかと考え、それを補うための努力を惜しみません。彼はひとことで言うと、好青年なんです。実は、そういう人間性もドライバーにとっては大事なことです。

 岩佐選手は2022年、フランスのダムスに所属していましたが、彼は時間がある時にはホイール磨きをして、メカニックを味方につけてしまうんです。僕はこの秋にフランスに行き、ダムスのエンジニアたちと話してきましたが、岩佐選手はチームのスタッフと強い信頼関係を築いていることも確認してきました。

 ダムスは今、すごく強いチームになっていますが、ドライバーの岩佐選手が中心になってまとめているからです。

 モータースポーツはチーム競技です。さまざまな国籍のスタッフとコミュニケーションをとり、チームをまとめ、強い組織をつくっていく能力は、世界で活躍するためには欠かせません。それを岩佐選手はすでに備えています。

 岩佐選手は2023年も引き続きダムスからF2に参戦しますが、どんな成績を残し、F1にステップアップを果たせるのか。そこは大きな見どころになると思います。

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