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F1角田裕毅の来季チームメイトは「手強い相手」と中野信治。「学習する段階はもう卒業」とレベルアップに期待 (4ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【角田裕毅に手強い新チームメイト】

 F1参戦2シーズン目を終えた角田裕毅選手(スクーデリア・アルファタウリ)は、レースウィークの時間の使い方や戦い方に関してはデビューイヤーとは比較にならないくらい成長していると思います。

 開幕戦から走りに安定感があり、クラッシュもかなり減った印象でしたが、それではまだ周りを認めさせるのにはちょっと足りなかったと思います。

 それでもシーズン後半はチームメイトのピエール・ガスリーをコンスタントにやっつけるシーンが増えてきました。角田選手がドライバーとして成長したという証を結果としてちゃんと見せてくれたことが、アルファタウリとの契約更新につながった。3年目にF1に残れるだけの資格を自分自身の力でつかみとったと思います。

 角田選手が真価を問われるのは、新たなチームメイトを迎える2023年シーズンだと僕は思っています。

 角田選手が新たにコンビを組むニック・デ・フリースは、2022年の第16戦イタリアGPに、病気欠場したウイリアムズのアレックス・アルボンに代わって出場し、デビュー戦でいきなり9位入賞を果たしました。

 レギュラードライバーになった途端に並みの成績しか残せなかったという例がけっこうありますので、実力は未知数ですが、角田選手にとっては手強い相手になると思います。日本GPでデ・フリースのアルファタウリ加入の記者会見が行なわれ、彼の受け答えをずっと聞いていたのですが、すごくクレバーで、コメントもしっかりしていました。

 だからこそ、角田選手は進化を止めてはダメです。角田選手はデビューしてからの2年間、チームメイトだったガスリーと兄弟のような関係で、いろんなことを学んできました。でも学習する段階はもう卒業で、これからドライバーとしてもう一段レベルアップしなければなりません。そのためには何か新しい刺激が絶対に必要だと思っていました。

 デ・フリースの存在が、角田選手のさらなる成長のための起爆剤になるかもしれないと、僕は楽しみにしています。角田選手には年明けのテストから速さをアピールして、スタッフの信頼を勝ちとり、チームを引っ張っていく存在になってくれることを期待しています。

後編「次世代の台頭」>>

前編「3強の戦い」>>

【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのCARTおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(前・鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として若手ドライバーの育成を行なっている。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や2021年からスタートしたF1の番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当している。

【著者プロフィール】
川原田 剛 かわらだ・つよし 
フリーライター。1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』を始め、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手掛けている。

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