フェラーリ急降下の要因は「責任の所在」、レッドブルは「ホンダの技術が強み」。中野信治がF1上位チームの戦力を分析 (3ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、五十嵐和博●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Igarashi Kazuhiro

フェラーリには絶対的なリーダーが必要

 フェラーリに関しては速いマシンはあるものの、戦略でのミスが目立っています。その原因のひとつは、先ほど話した組織づくりの点での遅れだと思います。作戦を決める際には、ドライバーのコメントを聞いて、ストラテジスト(戦略家)がさまざまな計算をして作戦を提案しエンジニアが最終的にどの作戦を採用するのか決定しますが、3者の信頼関係というか、バランスが取れてないのが現状です。

 ドライバーとチームのそれぞれの意見があり、どちらを優先させるか決める時にはデータももちろん重要ですが、最終的には経験に基づいた勝負勘によるところが大きいと思うんです。そこは勝負慣れしていないフェラーリの勘は鈍っている部分があると思いますし、前半戦のフェラーリの戦いぶりを見ていると、組織として責任の所在がはっきりしていないと感じます。

 例を挙げると、チームメイト同士でポジションを争っていて、どちらのドライバーを前に出すのか、という場面が何度かありましたが、なかなか決断できない。結果、作戦がすべて中途半端になってしまっているように見えます。フェラーリのそれぞれのスタッフの能力が低いのでは決してありません。責任の所在がはっきりしてないので、現場のスタッフたちがすごく動きづらくなっているという印象を受けています。

 チーム内に即断しづらい空気があるんだと思います。失敗をして責任を取りたくないから、状況がはっきりするまで決断しない。失敗に対する許容範囲が狭いイメージです。

 たとえば、僕がチーム監督で、チームオーナーから「ここで失敗したら、クビにするぞ」と言われたら、なかなか決められません。でも逆に、「レースは勝負事でどうなるかわかんないんだから、お前の意志で決めてやってみろ」と言われたら、うまくいく時もあればいかない時もありますが、しっかりと決断しますよね。単純明快に言うと、そんな印象です。もっとはっきりと決めればいいのにと思いますが、それ以前にフェラーリはすばやい決断ができる命令系統や組織がきちんとできているのかな......と気になっています。

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