フェルスタッペンの大逆転優勝、その背景に何があったのか。ハミルトンも驚いた「フェラーリはハードを履いたの?」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

フェラーリが犯した大失態

 だが、ピットアウトしたルクレールのペースはあまりに遅かった。マシンがスライドし、最終コーナーを素早く立ち上がることができない。その結果、ルクレールは45周目に抜けないはずのハンガロリンクでフェルスタッペンに抜かれてしまった。そして54周目にはラッセルにも抜かれる。

 原因は、フェラーリが履いたハードタイヤだった。

 スタートから立て続けに2セットのミディアムを使い切ってしまったフェラーリは、39周目にピットインするならハードを履くしかなかった。ソフトを履くなら、50周目あたりまで引っ張る必要がある。当初の予定はそうだったはずだが、フェルスタッペンの前を抑えることを優先してハードを履いた。

 これが失敗だった。

「マックス(フェルスタッペン)に対してポジションを守るためにピットインし、残り30周だったからハードを選択した。シミュレーションではウォームアップに数周かかって10〜11周はミディアムよりは遅いものの、それ以降は30周スティントの最後まで速く走れるはずだったんだ」

 フェラーリのマティア・ビノット代表は自分たちの戦略判断をこう説明する。

 暑かった金曜に比べて日曜は路面温度が20度も下がり、金曜のデータはアテにならなかった。土曜と日曜の午前に雨が降り、路面のラバーも流れて未知のコンディションだった。

 フェルスタッペンは当初、ハードタイヤでスタートする戦略を想定していた。だが、ピットからスターティンググリッドに向かう際、ソフトタイヤですらグリップ不足であることからハードスタートの戦略は厳しいとチームに進言し、ソフトスタートに切り替えて成功を収めている。

「僕らはハードタイヤでスタートする予定だった。でも、グリッドに向かうレコノサンスラップでソフトタイヤでもグリップに苦しんだくらいだったから『ハードなんて使えっこないよ』って言ったんだ。そこからソフトタイヤでスタートする戦略に切り替えることになったけど、チームのことは絶対的に信頼していたからね。ハードタイヤはかなり厳しかった。チャールズ(ルクレール)が滑りまくっていたようにね」

 ハードのペースがふるわないことは、すでにハードを履いたアルピーヌ勢のペースを見ても明らかだった。

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