レッドブル・ホンダ、天国から地獄へ。
なぜトップから失速したのか (3ページ目)
「フレッシュなタイヤに履き替えてまた前に追いつくことはできたけど、抜けなかった。ラインが1本しかなくて、それ以外はものすごく滑りやすい状態だったからね。全員が同じラインを走るしかなかった。ものすごくフラストレーションが溜まったよ」
6番グリッドスタートのルイス・ハミルトンも、同じようにベッテルに33周目まで抑え込まれ続けた。それでも、タイヤをいたわりながらミスを犯さず、チャンスが来るのを待ち続けた。
そして、ベッテルがピットインして前がクリアになったところで猛然とプッシュし、一気にレーシングポイントも捉えて首位に立つ。タイヤもインターミディエイトを50周にわたって保たせ、最後まで走り切った。
滑りやすいイスタンブールパーク・サーキットのウエットコンディションにおいて、メルセデスAMGは決して最速のマシンではなかった。
しかし、抑えるところは抑え、攻めるところは攻める。ミスも犯さない。ハミルトンは圧巻の走りでミハエル・シューマッハの記録に並ぶ史上最多タイ7度目のタイトル獲得を決めた。まさしく、史上最強王者の名にふさわしい走りだった。
最速のマシンに乗っているから勝ち続けているわけではない。彼が勝ち続けるのは、最強のドライバーであり、最強のチームの一員として長い年月をかけてそれを築き上げてきたからだ。
◆「ホンダF1撤退。フェルスタッペン、ガスリーの思いは?」はこちら>>
シューマッハの記録に並んで涙を流したハミルトンの姿を見れば、その道のりがいかに険しく、いかに多大な努力を注いでプレッシャーに打ち勝ってきたのかがわかるはずだ。それが外から見て楽勝に見えるほど、今シーズンのハミルトンは強かった。
それに比べてトルコGPのレッドブル・ホンダとフェルスタッペンは、あまりに不甲斐なかった。スタート失敗、2度のスピン、そしてタイヤを使いこなせなかったこと......。
フロントウイングのフラップ調整にミスがあり、マシン挙動も本来の状態ではなかったというが、レース前半にレーシングポイントを追いかけた速さを見れば、それが優勝を逃した決定的な要因ではない。タイヤもハミルトンのように保たせられなかった。
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