ホンダのモンスターマシンを操った悲運の天才。ダニ・ペドロサの功績 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 それを象徴するのが、この08年シーズンの第2戦スペインGPだ。

 当時のスペイン国王、フアン・カルロス1世の展覧レースとなったこの大会では、ロレンソがポールポジションを獲得したが、決勝はペドロサが優勝。ロレンソは3位で終えた。国王は表彰式にも来臨したが、その際、自分の両手で二人の右手をそれぞれつかんで握手をさせるというひと幕があった。ペドロサとロレンソはともに手を開かず、握りこぶしの関節が触れ合うぎこちない握手だったが、国王が媒介したこの"仲直り"は、翌朝のスペイン日刊紙がいずれも一面で大きな写真を掲載した。

 この強烈な敵対関係は、数年後に健全な好敵手同士へと、よい意味での変化を遂げる。12年にこの変化を問われた際、ロレンソは以下のように答えている。

「03年、僕たちは敵同士だった。05年にはもっと対立した。08年には、さらに激しい対立関係になった。今はレース後に健闘を称えて抱擁し合える関係だ。数年後には、結婚しているかもね」

 ペドロサも、それを補足するように当時の心境を説明している。

「当時はお互い子供で、自分が勝つことだけにこだわりすぎていた。勝利が重要なのは現在でも同じだけど、今はいろんなことがわかるようになって成熟したのだと思う」

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