レッドブルKTM悲願のMotoGP初勝利。ダークホースの新人が劇的力走 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 開催地のブルノサーキットは路面のバンプ(凸凹)が多く、選手たちは「決勝はタイヤに厳しい戦いになる。レース後半にタイヤが摩耗(まもう)してきてからが勝負の分かれ目だろう」とそろって口にしていた。

 決勝の展開は彼らの予想どおりになったが、レースを支配したのはクアルタラロでもなくモルビデッリでもなく、そしてエスパルガロでさえもなく、まさにダークホース的存在のビンダーだった。

 レース序盤はモルビデッリが独走した。1秒少々の差でやや引き離され気味のクアルタラロとエスパルガロは懸命に追走したが、エスパルガロは他車との接触により転倒。クアルタラロもリアタイヤの摩耗に苦しみ、ペースをどんどん落としていった。

 そうした中、ビンダーは先頭を走るモルビデッリと同様のペースで走行を続け、着々と距離を縮めていった。やがてモルビデッリのタイムが落ち始め、ビンダーはあっという間に追いつくと、レースの折り返し地点を過ぎたあたりであっさりとオーバーテイク。先頭に立ってもスピードを緩めることなく力強い走りを続け、最終的にはモルビデッリに対して5.2秒の大差を築いて、最高峰クラス初優勝を達成した。

 南アフリカ共和国出身の選手がMotoGPクラスで優勝するのは、史上初。2017年に最高峰クラスへの挑戦を開始したKTMにとっても、今回の優勝は3年半を経てようやくつかみ取った悲願の達成だ。そして、その歴史的偉業を達成したのが、優勝候補とは目されていなかったMotoGP参戦わずか3戦目の青年、というまさに劇的なレースになった。

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