F1ビジネスの未来。トロロッソがアルファタウリにチーム名変更の意味 (6ページ目)

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 グリッドがすべて埋まれば、参戦権としてのフランチャイズ料を課金できるようになり、そうなれば、F1の運営者であるリバティメディアの収益は大幅に増えることになるだろう。また、これが実現すれば各プライベートチームは自分たちのチーム価値の増大につながる。既存のチームを買収し、そこに必要な投資を行なうことで、チームの実力アップ≒資産価値を高めれば、F1参戦を望む自動車メーカーや企業への再売却によって、多額のキャピタルゲインを得ることができるだろう。

 ただし、そうした状況を実現するためにも、6台分の空きグリッドを埋める「新規チームの参戦」はF1にとって大きな課題だ。そして、F1に新規参戦チームを呼び寄せようとするならば、テクニカルレギュレーション(技術規定)の敷居を下げて、新チームが参入しやすくなる措置を講じる必要がある。

 ちなみに、バルセロナテストで走り出した2020年型のF1マシンの中には、あまりにも昨年型のメルセデスに似ているため、「ピンク・メルセデス」と呼ばれているレーシングポイントの新車や、長年、レッドブルの技術支援を受けているアルファタウリ(旧トロロッソ)、フェラーリの支援を受けるアルファロメオなど、事実上トップチームの「2軍」とも言えるチームと、独力でマシン開発を行なう他チームとの不公平感も一部で問題になりつつある。

 たとえば、すべてのチームにマシンの自主開発を義務付ける、現在の「コンストラクター」の定義を変更し、F1でもかつて検討された「カスタマーカー」(他のチームが開発したマシンを他チームに供給すること)を解禁すれば、F1への新規参戦ははるかに容易になるだろう。その結果、26台分のエントリーリストが埋まれば、それがF1にとって「良いコト」なのかは議論の分かれる部分もあるだろうが、フランチャイズ・ビジネスとしてのF1が大きく変わることにもなるかもしれない。(西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira)

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