佐藤琢磨が逆境はねのけ今季2勝目。実力で「犯人扱い」の声を封じた (4ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 1シーズン2勝は自身初。そしてキャリア5勝目はショートオーバルでの初めての勝利となった。初勝利は2013年ロングビーチのストリート、2勝目が2017年のインディ500=スーパースピードウェイ、3勝目は2018年のポートランド=常設ロードコース、今年のバーバーでの4勝目もロードコース。琢磨はこれでインディカー・シリーズにあるコースバリエーションすべてで優勝したこととなった。

 インディカー・シリーズは、どんなコースでも速いドライバーを決めるもの。コースを選ばず速く、アメリカ人が最も大きな敬意を払う"万能ドライバー"に琢磨はなったのだ。全コースバラエティ制覇は、テニスやゴルフのグランド・スラムに匹敵する快挙だ。

 しかも、その勝利を琢磨は苦境の中で記録した。濡れ衣を着せられても強く反論がしにくい立場にあった彼は、クリーンに戦い、センセーショナルな大逆転優勝を記録することで批判を封じた。最後のカーペンターとのバトルも清々しいものだった。逆境を跳ね返しての劇的勝利。こんなことができるドライバーはそうそういない。

「ほとんどのメディアが僕をフェアに扱ってくれた。嫌な気持ちになったこともあったが、チームをはじめとして多くの人たちがサポートをしてくれた。ゲイトウェイの熱心なファンは、僕をずっと応援し続けてくれた。チームは結束し、順位を落としてもあきらめないで頑張ってくれた。ピット作業も速かった。僕を支えてくれたこれらの人々全員に、なんとお礼の言葉を言ったらいいのか......」

 感激した様子の琢磨は、「残る2戦でも好成績を挙げて、ランキングを1つか2つ、上げたい!」と話した。

 ラジエーター破損でディクソンは20位。ポイントトップからは70点差となり、6度目のタイトルは厳しくなったかもしれない。ロッシもレース展開が裏目に出て13位。ランキングは3番手に下がり、トップとのポイント差は46点に広がった。まだ逆転は可能だが、このところの勢いのなさが気にかかる。

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