2019.08.29

佐藤琢磨が逆境はねのけ今季2勝目。
実力で「犯人扱い」の声を封じた

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

インディカー・シリーズ第15戦ゲイトウェイで今季2勝目を挙げた佐藤琢磨 インディカー・シリーズ第14戦ポコノでの1周目に発生した多重アクシデントは、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)ひとりが引き起こしたものではなかった。

 ポジションを争った3台のマシンは、高速走行で作り出される乱気流と、路面の継ぎ目を埋めるシーム剤による影響を受けて接触し、後続の2台を巻き込んだ。競争の激化が進んでいるインディカーのレースでは、バトル時のマシンとマシンの間のスペースがどんどん小さくなっている。様々な要素が同じタイミングで働き、3台は絡んでしまった。

 テレビのライブ放送は、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)のオンボード映像を使っており、アウト側を走っていた琢磨がイン側に切り込んできたように見えた。それは広角レンズを使っているからだが、批判は琢磨に集中した。しかし、琢磨は自分のラインを保持し続けたと主張。後に公表された琢磨のオンボード映像を見ると、彼の言い分に間違いがないことがわかったが、一度勢いのついた琢磨批判は止まらなかった。

 チャンピオン争いをしているロッシがポイントをほとんど獲れない状況に陥ったため、彼のファンは怒りを爆発させた。そのロッシも自分がラインを保持していたと主張し、「先行するスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のドラフティング(を自分だけ手にしようとインにラインを変えただろう!」と琢磨非難を展開した。
※他のマシンの直後を走行することで空気抵抗が小さくなり、スピードが増す状態

 それに同調するドライバーも現れた。ロッシのイン側を走っていたライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は、「自分の外の2台(ロッシと琢磨)の接触が発端で、自分は関与していない」とアピール。彼がアウト側へとじわじわマシンを寄せていったことは多くの映像で明らかだったが、それは自分が走り続ける権利を持つレーシングラインだったと主張した。