【F1】振り出しに戻ったマクラーレン・ホンダは再浮上できるのか (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 レース後、ミーティングや日本との電話連絡に追われた後、新井はガックリと肩を落としてそう語った。結局、カナダの週末だけで4つのトラブルが立て続けに発生し、状況の把握と原因究明、そして対策に追われた。

「すべてがうまくいかず、噛み合わないまま終わってしまいました。厳しい戦いになると覚悟していましたが、金曜からトラブルが多すぎて十分なセッティングができず、今日も走らせるので精一杯で、最後はリタイアですからね……」

 これまで一歩ずつ前進し、前戦モナコGPではついに今季初入賞(8位)したマクラーレン・ホンダだったが、カナダGPでこれまで積み上げてきたものが崩れ落ちた。新井にとって、そのショックは大きかったようだ。どんな時でも前向きに語り、メディア対応の矢面に立ってきた新井だが、この日ばかりは弱音が口を突いて出た。

「目指す所が高いだけに極限まで攻めていますから、色んな事が起きてしまうのは自分たちでも分かっています。それにしても、これだけ一度にトラブルが起きなくてもいいのにという気分です……。ファンの人たちにも申し訳ないですし、これまでで一番ツラい週末でした……」

 しかし、新井を慰めるように、ドライバーが「僕らはあきらめない」と言った。苦しいレースの後でも、ふたりはチームを責め立てたり弱音を吐いたりしなかった。

「ゼロから始めたプロジェクトなのだから、時間がかかるのは当然だ。これだけ競争の厳しいF1で、最初から勝つことなんてできないことも分かっているよ。だけど、トップから4秒遅れでシーズンをスタートしてからここまでの進歩は評価すべきだし、だからこそ僕らは自信を持っている」

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