【F1】イタリアGP好走も、可夢偉は3人目の補欠? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そう言って可夢偉は悔しがったが、自分の仕事ぶりには大きな手応えをつかんでいるのが、その表情から分かった。

 他車のペナルティで18番グリッドを得た決勝は、スタートからミディアムタイヤで果敢に攻め、ハードタイヤを履くザウバー勢に迫る速さで周回を重ねた。マルシア勢はもちろんのこと、ロータスのロマン・グロージャンさえも寄せつけない好ペースだ。

「さすがにザウバーに勝とうとは思ってなかったけど、後ろについて行けてるっていうくらいですね。でもまぁ、これまではザウバーにすら周回遅れにされていましたからね(苦笑)」

 ハードタイヤに換えて相手がミディアムを履く後半は、苦しい展開になるかと思われた。自力に優るザウバーとロータスには先行を許したが、しかしマルシアのジュール・ビアンキを寄せつけず、むしろ引き離していく力強い走りを最後まで続けた。

 17位フィニッシュ。ポイントが欲しいチームにとってはさしたる価値のない結果かもしれないが、今のケータハムが置かれた状況と、この4日間の可夢偉の奮闘を振り返れば、その内容は十分賞賛に値するものだった。

「急きょ駆けつけてチームをサポートしたみたいな形になりましたけど(苦笑)、自分の仕事ができたかなと思いますね。やり切った感はあります。FP-1(金曜のフリー走行)で走れなかった分、ひとつでもリズムを落としたら取り返しが付かなくなるから、目標地点に持っていくために確実に仕事をこなしていかないといけなかったんです。逆に、それが良かったんですね。マルシアやロータスが遅くなったわけじゃないでしょうし、このコースで僕らのエンジンが速いわけじゃないとも思うし、そんな条件の中でこれっていうことは、ステップとしては良かったと思います」

 可夢偉はエースドライバーとしての能力を遺憾なく見せつけた。結果だけでなく、チームを牽引するという面でも可夢偉の存在価値は大きかった。チームの面々もそのことは痛感したはずだ。

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