2014.09.11

【F1】イタリアGP好走も、可夢偉は3人目の補欠?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 木曜の朝、イタリアGPの週末が始まろうとしているというのに、小林可夢偉はまだパリのシャルルドゴール空港にいた。F1ドライバーになってからというもの、木曜日に現地入りするのは初めてのことだ。

 ケータハムF1チームはロベルト・メリというスペイン人ルーキーの起用を画策していたようだが、F1参戦に必要とされるスーパーライセンス取得がならず、断念せざるを得なかった。そこでベルギーGPにも出場したアンドレ・ロッテラーに出場を打診したが、メリに経験を積ませるため金曜フリー走行1回目を明け渡さなければならないという条件に彼は首を縦に振らなかった。

イタリアGPで完走し、17位だったケータハムの小林可夢偉 こうして水曜の朝になってようやく、チームは可夢偉を起用するという結論に達した。この時点で日本にいた可夢偉は、「来てくれ」というチームから依頼を受けて急きょミラノへと飛ぶことになったのだ。水曜日中にヨーロッパへと向かうフライトはもう夜行便しか残されておらず、早朝にパリに着いた可夢偉は寝ぼけ眼のままミラノへ乗り継いで昼前にモンツァへとたどり着いた。

 そのくらい慌ただしい、可夢偉のイタリアGPの始まりだった。

 その道中、ツイッターでは「今の心境なんて聞かないでください」という言葉で複雑な気持ちを表現していた。

「とても嬉しいです、って言うたら嘘になるでしょうね。現場に来たらレースをするのが当たり前やしそれが僕の仕事なんで、そこに関してはモチベーションがどうとかいうことはないですよ。もちろん、もっと時間があればしっかり準備ができたでしょうけどね」

 チームはベルギーGPからマシンを大幅にアップデートしてきていた。しかし、可夢偉が突然シートを失ったスパ・フランコルシャンでは経験不足の若手ふたりのドライブでその効果を引き出し切れず、可夢偉にとってもアップデート仕様のマシン性能は未知数だった。

 FP-1(フリー走行1回目)を新人メリに譲り、可夢偉はFP-2(フリー走行2回目)の90分のみでその新たなマシンの感触を確かめなければならなかった。ストレートが長い超高速のモンツァでは極力ダウンフォースを削った空力パッケージで走ることになる。となればマシン挙動は通常とは異なり、ブレーキングの習熟も必要になる。新しいサーキットでも10周も走れば習得できると豪語する可夢偉でも、モンツァへの適応には時間が必要だった。