2014.05.13

【F1】「下位チームの悲哀」を乗り越え可夢偉は前進する

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

5月特集 F1 セナから20年後の世界

 スペインGPが開催されるバルセロナのカタルーニャサーキットのパドックに、今年も所狭しと11チームの豪華なモーターホームが建ち並んだ。この光景を見ると、F1がヨーロッパに戻ってきたのだということを実感する。

 ヨーロッパラウンドの開幕となるスペインGPは、地元の英雄フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)の人気もあって、例年大勢のゲストがやってくることで知られている。

「今年のバルセロナは人が少ないなぁって思ってたんです。でも向こうの(上位チームのモーターホームの)方に行ったら、えらい人がたくさんいましたね。あ、そういうことかって自覚しましたよ」

 ケータハムの小さなモーターホームの2階で、小林可夢偉は苦笑いをしながら言った。

最下位に沈むケータハムを牽引する小林可夢偉 ランキング最下位のケータハムは、メインゲートから最も遠いパドックの隅に追いやられている。大勢のゲストで賑わうフェラーリやレッドブルのモーターホームが建ち並ぶ一角から遠く離れ、ここまでやってくる人は少なく、閑散としている。

「こっちまで来てくれないんですよね(苦笑)」

 そうこぼした可夢偉は、バルセロナのコース上でも、イヤというほど「下位チームの悲哀」を味わった。

 今回、ピレリが4種のスペックのうち、最も硬いハードタイヤとミディアムタイヤを投入したことで、可夢偉とケータハムはおおいに悩まされることになってしまった。

 低速から高速までさまざまな種類のコーナーが折り込まれたこのサーキットでは、マシンのあらゆる性能が試される。十分なダウンフォースがなければ高速コーナーでマシンを路面に押しつけて安定させることはできず、タイヤに負荷をかけてゴムの内部まで発熱させて性能を引き出すことができない。F1のタイヤ表面のゴムを溶かして路面に粘着させるためには、110度を超える温度が必要とされる。

 発熱できないとグリップ力が高まらずに滑り、摩擦熱で表面だけがオーバーヒートする。そのせいで摩耗が進み、余計にグリップ力が下がってさらに滑るという負のスパイラル。それは十分なダウンフォースがないマシンと、硬いタイヤという最悪の組み合わせによって生み出されていた。