2014.05.20

【F1】名門マクラーレンで陣頭指揮をとる日本人、今井弘の奮闘

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

5月特集 F1 セナから20年後の世界

日本人エンジニアの現在地 part1  今井弘(マクラーレン)

 マクラーレン・ホンダとアイルトン・セナが活躍した時代から20年。日本のメーカーが相次いでF1から去った今でも、優秀な日本人のエンジニアたちがF1界でその能力を評価され、チームの根幹を支えている。彼らを紹介するシリーズの第1弾は、マクラーレンで活躍する今井弘。ブリヂストンから名門F1チームに加わった日本人エンジニアの戦いの舞台裏とは――。

 決勝レースが終わるとすぐに、各チームのピットガレージ裏には使い終えたばかりのタイヤが何本も積み重ねられる。簡単に清掃作業を行ない、ピレリのエンジニアがチェックをしたうえでピレリへと返却するためだ。

 そのタイヤの”壁”の横に、いつも今井弘の姿がある。

名門マクラーレンで2009年からエンジニアとして活躍する今井弘「タイヤと話をしているんです」

 ブリヂストンでF1タイヤ開発に携わっていた今井は、2009年にマクラーレンに起用されビークルダイナミクス部門、つまりタイヤを中心としたマシン運動性能に関わる部分の責任者として、レース戦略と車体開発の両面を担っている。

「タイヤが『全然ダメだよ!』と悲鳴を上げているので、『しょうがねぇな』とその文句を聞いているんです(苦笑)。我々エンジニアは走行中のタイヤを自分の目で見ることはできません。ですが、クルマから送られて来るテレメトリーデータを見ながら、頭の中で想像しながらタイヤ状況をモニターしています。走行後のタイヤの摩耗肌を見れば、走行中に何が起きていたのかを逆算することができるし、自分の頭の中のシミュレーションが正しかったかどうかを確認できるんです」

 そう言って今井は、長時間にわたってタイヤの表面をじっと見つめ、何かを考え込み、そしてまたタイヤを見るという作業を繰り返す。

 中国GPのレースを走り終えたマクラーレンのタイヤは、フロントタイヤがボロボロに摩耗して、いかにも苦しい今のチーム状況を物語っていた。フロントに厳しい上海のサーキットでは、マクラーレンの不利はいつも以上に大きくなることは今井にも分かっていた。